日本各地で開催されている音楽フェスは、音楽はもちろん、風土や文化、人とのつながりを体感できる場所として注目を集める。大規模なフェスで豪華アーティストたちの演奏を肌で感じるのも良いが、独自のコンセプトやロケーション、空間設計や出演者の選定、自然との関係性にまでこだわり抜かれたプログラムを体験できる地域密着型フェスに参加するのもまた楽しい。今回はAlways Listeningの中の人たちが気になっている4つのフェス――橋の下世界音楽祭(愛知)、岩壁音楽祭 THE FINAL(山形)、りんご音楽祭(長野)、FFKT Izu Shirahama(静岡)を紹介する。
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祭りとは共に創るもの、橋の下世界音楽祭
2012年より開催されている「橋の下世界音楽祭」。会場は愛知県豊田市の豊田大橋下に広がる千石公園で、地元を拠点に活動するバンド TURTLE ISLANDの永山愛樹を中心に結成された有志の実行委員会によって、ステージや会場設備などほぼすべてがボランティアの手で作られている。開催初期の入場システムは投げ銭で始まり(現在はサポーターズパス制度を導入)、参加者は「祭りを支える一員」として位置づけられるなど、いわゆる “商業化” を避けているのも大きな特徴だ。
2025年は「橋の下大盆踊り SOUL BEAT ASIA 2025」と題しての開催。TURTLE ISLAND、OKI DUB AINU BAND、ANJI、GEZAN、滞空時間、切腹ピストルズなどの他、トゥバ共和国からフンフルトゥ(Huun-Huur-Tu)韓国からはROOTSREDEEMやAsian Spice Houseなどの出演が発表されている。盆踊りをはじめ世界の民謡やパンク、ダブなど、多彩なジャンルの音楽体験のほか、伝統芸能や子ども神輿、グラフィティアートなども展開される。開催期間は、2025年8月14日から16日まで。
高さ50m以上の岩壁が舞台、岩壁音楽祭
2019年にスタートした「岩壁音楽祭」は山形県高畠町の瓜割石庭公園にある採石場で開催される野外音楽フェス。「オープンソースなフェス」をコンセプトに掲げており、立ち上げ当時はフェスや野外イベントの運営経験は皆無だった主催者が、フェス運営に関する知見や経験を持つ関係者の協力を受けて実現させ、これまでの開催における内情——ブッキング、測量図面や会場設営、収支状況、さらには新型コロナウイルスの影響による開催延期の判断過程まで、蓄積された知識や情報をnoteで公開している。
出演アーティストは冥丁、志村知晴 × 君島大空、北村蕗、KID FRESINO、ermhoi、CYK、D.A.N.など。これまで開催期間は1日のみだったが、「岩壁音楽祭 THE FINAL」と題した今回は初めて2日へと拡大。最終的な運営ノウハウを収集し、マニュアルの完成をもってプロジェクトはその幕を閉じる。チケットはオンラインでは販売せず、紙チケットを手売りしており、東京、京都、山形、岩手、宮城、愛知にある取扱い店舗で購入可能だ。開催は2025年9月20日・21日。
りんごの街で音楽にかじりつく2日間、りんご音楽祭
長野県松本市のアルプス公園を舞台に毎年開催される野外音楽フェス「りんご音楽祭」は、地域の活性化、若い才能の発掘、街へのアート体験の提供などを目指す地方発フェス。わかりやすさ、親しみやすさ、そして松本らしさを込め、長野の名産りんごにちなんで命名された。また、ステージ名はそれぞれ長野県の名産品にちなんで「りんごステージ」「そばステージ」「おやきステージ」「わさびステージ」「きのこステージ」。
2025年の出演アーティストはTENDRE、GLIM SPANKY、水曜日のカンパネラ、chelmico、サニーデイ・サービス、RHYMESTER、yonige、あっこゴリラなど。多彩な顔ぶれが揃う出演アーティストに加え、毎年開催される「RINGOOO A GO-GO」というライブオーディションも注目されており、過去には水曜日のカンパネラ、CHAI、Tempalay、MONO NO AWARE、Johnnivan、鋭児、machìnaなど、現在の音楽シーンを担う注目のミュージシャンたちが参加してきた。開催は2025年9月27日・28日。
海に臨むホテルで開催、FFKT Izu Shirahama
静岡県下田市のホテル伊豆急にて開催される「FFKT Izu Shirahama」。FFKTは長野県で2006〜2018年まで開催されていた野外フェス「TAICOCLUB」の流れを汲んでおり、かつてTAICOCLUBと呼ばれていたフェスティバル(=the Festival Formerly Known as TAICOCLUB)としてこの名が付けられた。2019〜2023年までは主に長野県・こだまの森で野外フェスとして開催されていたが、新型コロナ禍に伴う変化により、2023年にスピンオフ企画「FFKT Izu Shirahama」としてホテル伊豆急にて開催され、定着した。予約をすればホテル伊豆急に宿泊可能。温泉などの館内施設も利用可能になるので、フェスのすぐあとにゆったりリラックスできる。
現在発表されている出演アーティストは、ジジ・マシン(Gigi Masin)。その他出演者については、順次発表されていくようだ。2024年はAkiram EN、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN、Shinichi Atobe、フォテー(Photay)など、日本国内外から多彩なDJやライブアーティストが出演している。開催は2025年9月27日・28日。
※情報は公開日時点のものです。チケットの販売や開催状況については変更となる場合があります。参加を検討される際は、必ず各フェスの公式サイトや公式SNSで最新情報をご確認ください。
Information provided by:Kunihiro Miki, Shoichi Yamamoto, May Mochizuki
Edit:May Mochizuki