人には喜怒哀楽があるがゆえ、解放感のある幸せを感じるときもあれば、気持ちが沈みストレスを感じるときもある。快も不快も感じざるを得ないのが、現代の人間社会。そこに追い討ちをかけ、新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るっていることもあり、近年、人々の身体の調子や心の状態は大揺れ状態である。
しかし人類というものは、追い詰められたときにそこから這い出す知恵を持っていて、肉体も精神も、できる限り良好な状態を保つことができるよう、さまざまな術を生み出してきた。インド古来から存在し、呼吸とポーズで身体を強化するヨガもそのひとつ。そこでこの度、ヨガ道20年の経験を持ち、オンラインスタジオ「Veda Tokyo」を主宰する吉川めいさんに、ヨガを生活の中に取り入れることの素晴らしさについて話を聞いてみた。

ヨガを中心としたオンラインスタジオ「Veda Tokyo」を主宰し、ヨガ道20年の経験を持つ吉川めいさん
©Miyuu Kitayama

吉川さんがヨガを始めたきっかけは、何だったのですか?

20歳の頃に身体を壊してしまったことがありまして、最初は女性特有の冷えや、こり症からはじまり、そのうち不眠症をわずらい病院へ行ったんですけど、病院では原因を探らずに、抗うつ剤や睡眠薬しか処方しようとしなかったんです。その対応に不信感を抱いていた時期に、友人の結婚式でイタリアへ行き、そこで姿勢が良い女性に出会ったんです。そのときに「この人は、何か運動をしているな」と思い、思い切って話かけてみたところ、オーストラリアの方で「週に3回ピラティスをしている」、「ピラティスはヨガと似ているけど、道具を使って行うものなのよ」と話をしてくれまして、ピラティスに興味を持ったんです。だけど日本でその頃はピラティスを教えているところがなかったので、似ていると言っていたヨガを教えてくれるところを探し始め、東京にまだ数軒しかヨガスタジオがなかった中、幸いその1軒が自宅から近いところにあり通うようになったんです。

実際に初めてヨガを受けてみたときは、いかがでしたか?

初心者クラスだと思い「プライマリー(初級)」と呼ばれるクラスを受けたんですけど、それはインドでの初級で、日本では上級クラスにあたる内容だったんですよ。なので初心者の私にはとてもきつくて、10~15分ほどで先生からストップがかかってしまい、しばらくマットの上で横になったんですけど、そのときに思わず寝そうになったんです。呼吸を意識してポーズをとることを10~15分しただけで身体が反応をして、それまで不眠症で寝れなかったのに、寝落ちしそうになった自分に驚いて。そのときにヨガの即効性を強く感じました。

ヨガを始めると、どのような効果を得ることができるのでしょうか?

きちんと呼吸をするというアプローチから入り、何年間か継続してやっていくと、身体と心のバランスが根本的に整えられます。同時に自分のコントロールの限界を知り、そこから「手放す」という領域に入っていくと、気持ちも解放され、心身の健康を取り戻すことができます。自分が指導をする立場になってから分かったのですが、身体や心の状態が良くない人がクラスに来ると、呼吸を意識して行うだけで一度で効果があることを目の当たりにするんですね。ヨガは他のフィットネスやエクササイズとは根本的に異なり、ヨガの古典に基づく身体の体勢=神経システムと、呼吸を一致させることで、短時間の動きでも圧倒的な効果が得られるんです。

ヨガは他のフィットネスやエクササイズとは根本的に異なり、短時間の動きでも圧倒的な効果が得られる

メンタルとフィジカルを、バランスよく同居させていけるようになるんですね。

熱が出たときや怪我をしたときに、治癒するのは自分の身体なんですが、それは自分の我(メンタル)がコントロールしているのではなく、大自然から生まれてきた人間の肉体が持つ力でもあるんですね。人にはパーソナリティがあるので、自分はこうありたいと願う生き物ですが、それが思い通りにいかないことがありますよね。そのときに「自分が思っていることはすべてではない」ということに気付いて、その思いを手放すと心身がリラックスできる状態になっていく。ヨガを続けていると肉体の鍛錬を通じて、自分がどんどんシンプルになっていくことに気付くんです。

心身ともに、余計なものを削ぎ落とせる状態へと持っていけるヨガの効果は素晴らしいですね。

ヨガは何千年も前からあるものですが、私は人間の旅路みたいなものだなと感じています。ヨガでは大昔から「ハタ」という言葉があり、それは太陽と月を意味するんですが、陰陽論では、収縮に向かっていくのが陽の力、それを拡散してリラックスさせていくのが陰の力と言われているんですね。昼にエネルギーを集中させ動いて、夜にそれを解放して休んでバランスを整える。私は朝起きて、身体の中心を確認して、心の静けさを感じる時間を作り、自分をチューニングしてからその日を過ごすんですが、それを行うことにより1日の流れが調子よくなるんです。

ところで音楽は、吉川さんのライフスタイルにどのように作用していますか?

洋楽が主ですが、私が聴いている音楽はエクレクティックなものが多いです。コアなところではインド音楽やマントラのチャンティング、ポップやヒップホップ、オペラやクラシックも聴きます。ジャンルは幅広いですが、神がかっているアーティストが好きですね。ヒップホップはコモンやアリシア・キーズ、オペラではジョナサン・アントワンなど、どのアーティストもソウルを感じさせてくれるんです。集中力を高めたいときには、エミリー・サンデー「セラ」や、ジョナサン・アントワン「アヴェ・マリア」などの癒し効果のある曲をリピートして聴いたりします。

エミリ・サンデ「セラ」
YouTube Musicで視聴

ジョナサン・アントワン/アベ・マリア
人が生きている中で生まれるさまざまなストーリーを、自分のフィルターを通じて神のように透き通って伝えられるアーティストたちの存在は、自分にとって愛おしい

ヨガや瞑想をしているときに、音楽を聴くことはありますか?

気がまぎれるので、基本的には取り入れることはないです。心と身体の空間を保ちたいので、ヨガをしているときに聴いているのは自分の呼吸音、瞑想をしているときは脳内で起きていることを感じているだけなので。ただ指導者としての自分の役割は、みなさんに心地よいと感じられるよう案内することなので、人によっては音楽を利用してガイドさせて頂くこともあります。音楽は国境を超えて多くの人に届くバイブレーションを持っているので、活用するには最適なツールなんです。私のクラスにはミュージシャンやアーティストの方々も多くいらっしゃいますが、みなさんヨガを通じて前向きなバイブスを感じてくれているようで、感覚を研ぎ澄ませるためにいらっしゃる方も多いですね。なので五感を磨きたい方にも、是非ヨガはお勧めです。

感覚を研ぎ澄ませたいと願う方に、ヨガはお勧めしたい

吉川めい

Mae Yoshikawa

オンラインスタジオVeda Tokyo主宰。日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者。大学時代に母親の病気をきっかけに心や意識の謎の追求を始め、その過程でヨガを知る。13年間インドと日本を行き来しながら瞑想やヨガの修行に励む。
「Yoga People Award 2016」ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。ヨガ雑誌YOGINIの表紙を創刊から10年飾り、現在はadidasグローバル・ヨガアンバサダーとして広告モデルを務める。ヨガ歴20年。2児の母。

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Hair&Make-Up:Yoshikazu Miyamoto(BE NATURAL)
Words:Kana Yoshioka