理想的なリスニング体験は、機材だけでなく「部屋の音響環境」によっても大きく左右されます。今回はオーディオライターの炭山アキラ先生が、自宅でできる吸音・反射対策やスピーカー調整といった音響改善の基本をわかりやすく解説。

大がかりな設備投資をしなくても、ちょっとした工夫で音の鮮明さやバランスが大きく変わる実践的なポイントを紹介します。

自宅の音響を整えるための吸音・反射・スピーカー調整のポイント

もしあなたが専用のリスニングルームをお持ちで、少しばかり予算をかけて部屋の音響を良くしたいとお考えなら、ご予算と手間の違いで数多くの方法論があります。

まず、その部屋が左右対称の矩形なら、スピーカーもできる範囲で左右対称になるよう設置しましょう。そして、スピーカーの音が床や壁、天井へ1回反射して耳へ届く「1次反射」の位置に吸音パネルを置く、あるいは張り付けると、音楽のにじみが収まり、鮮明に聴こえるようになるものです。

自宅の音響を整えるための吸音・反射・スピーカー調整のポイント

オーディオ対策グッズとして、吸音パネルは数多くのメーカーから発売されていますが、床や壁の一時反射削減をとりあえず実験してみるなら、床ならタイルカーペットを何枚か購入して位置をずらし、枚数を調整していくと分かりやすいものです。壁はタペストリーやカーテンなどで調整するとよいでしょう。それで効果のほどが確認できれば、改めて天井まで含めたメーカー製の吸音/反射パネルを導入するのがよいと考えます。

スピーカーの低域の量を調節する方法は、以下の記事で解説しました。それでは、高域が耳障りなスピーカーをより好ましい音へセッティングするには、どうすればよいでしょうか。具体的には、スピーカーの正面をどれくらい耳の向きへ近づけるかで、高域方向の聴こえ方はかなり明確に変わってきます。ややキツめだなと感じたらスピーカーを正面へ向け、もう少し高域が聴こえてほしい場合はリスナーの方へ傾けてセットすれば、より聴感上フラットに近づけることができます。

設計と防音から考えるリスニングルームの作り方

例えば新築をこれからなさるに当たり、リスニングルームを作りたいとお考えの人もおいででしょう。専門業者に頼んで、自動車1台分くらいのコストをかけた防音室にされるのが最も確実ですが、そこまでせずにより良いオーディオルームを構築するには、どうすればよいでしょうか。

設計からある程度自由になるのなら、部屋の横幅、高さ、奥行きの長さが倍数にならないこと、できるだけ割り切れない数字にすることが有効です。対向する壁や天井と床との間で、必ず音は共鳴するものですが、その共鳴周波数をできるだけバラつかせ、大きなピークにしないことが大切なのです。

そういう意味で、例えば8畳間などの上から見て正方形の部屋は、耳障りなピークが出やすいことになります。そんな場合に対処する方法があるかといえば、壁の片方をほんの僅かに平行からずらすという方法があります。今お使いの部屋でも、構造によってはリフォームの感覚で施工は可能だそうですから、工務店へ問い合わせてみられるのもよいでしょう。

また、一般的なお部屋で専用のリスニングルームを構築される際に、最も問題になるのは隣家への音漏れでしょうね。窓はガラスの厚みを違えた二重窓にするのが有効です。同じように壁から音が漏れるようなら、壁の内側にもう1枚ずつ石膏ボードを貼り付けると、ずいぶん音漏れが少なくなります。こちらも工務店に問い合わせれば、比較的簡単に施工してくれるでしょう。

設計と防音から考えるリスニングルームの作り方

ここまでは専用のリスニングルームを持つことができた場合の話でしたが、リビングで家族に遠慮しながら音楽を楽しまれている人も少なくないだろうと思います。何のことはない、わが家だってそうです。特にうちのリビングはL字型の部屋ですから、先に書いた左右対称の理想的なセッティングなんてとても望めません。

こういう場合にどうすればいいのかというと、実もフタもない話ですが、自分の耳を信じて理想の音を求め、煮詰めていくしかありません。幸いわが家では、さほど特別なことをしないでもそこそこ満足すべき音を出すことができています。同じ境遇にあるご同輩も、地道な努力が実を結ばれていることを祈ります。

Words:Akira Sumiyama

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