ファッションを秋色に替えるように、少しだけ落ち着いたトーンの音楽が聴きたくなる季節。今回は “音の衣替え” をテーマに秋にお勧めできるブラックミュージックをFace Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。

深まるグルーヴに包まれて

秋になって気温が落ち着いてくると、夏よりも少し人恋しさが増してきます。陽がはやく傾いて、カーテン越しの光が柔らかくなる時間、軽快だった夏のリズムを離れて、ゆったりとしたテンポに身を委ねたくなる秋、外の空気が肌寒くなってくるほど、レコードの温もりを優しく感じてみたくなる。そんな季節に聴きたくなるのは、ジャズの香り漂うソウルやR&B。

音楽との距離が少しだけ近くなる秋に針を落としたくなるようなレコードを探してみました。

Joe Thomas「Coco」(1976年)

Joe Thomas「Coco」(1976年)

日本のヒップホップ・グループ、Buddha Brandの「ブッダの休日」のサンプリングネタとして有名です。グルーヴのあるギターのカッティングにジョー・トーマス(Joe Thomas)のフルートとシンセサイザーが展開されて、秋のリラックスしたムードを盛り上げてくれます。

The Counts「Tecalli」(1974年)

The Counts「Tecalli」(1974年)

デトロイト出身のソウルファンクバンド、ザ・カウンツ(The Counts)のインストゥルメンタル人気曲です。ジャズテイストでグルーヴ感のある大人のサウンドがカッコいい。どこか物悲しいマイナー調のメロディが秋らしさを感じます。ギターのオクターブ奏法が曲中に入ると急に大人の雰囲気が出ますよね。あれ、なぜでしょうね。

Leon Haywood「I Want’a Do Something Freaky To You」(1975年)

Leon Haywood「I Want'a Do Something Freaky To You」(1975年)

ソウルファンクアーティスト、レオン・ヘイウッド(Leon Haywood)のヒット作で、ドクター・ドレー(Dr. Dre)、50セント(50 Cent)など、様々なミュージシャンに頻繁にサンプリングされているソース曲として有名です。セクシーな女性ボイスがアクセントになっていますが、昼間、健全な場所で流すのは勇気が必要です。

Ronnie Foster「On The Avenue」(1974年)

Ronnie Foster「On The Avenue」(1974年)

ロニー・フォスター(Ronnie Foster)はグラント・グリーン(Grant Green)やジョージ・ベンソン(George Benson)の作品にも参加しているファンク、ソウルジャズのキーボード奏者で、アシッドジャズと共に熱狂的な支持を得ました。

「On The Avenue」は1974年にBlue Note Recordsからリリースされたアルバム『On The Avenue』の表題曲で、ソウルジャズ色が濃厚な楽曲です。シンセサイザーが特徴的です。

Julius Brockington「Forty-Nine Reasons」(1973年)

Julius Brockington「Forty-Nine Reasons」(1973年)

ジュリアス・ブロッキントン(Julius Brockington)は、Pファンク(P-Funk)などと共演している伝説のキーボード奏者です。今回紹介する曲はどれも多くのアーティストにサンプリングされていますが、この曲もマッドリブ(Madlib)、スクールボーイ・Q(ScHoolboy Q)など様々なアーティストに取り上げられています。フルートのメロディが印象的です。

Black Heat「Rapid Fire」(1974年)

Black Heat「Rapid Fire」(1974年)

ワシントンDC出身のファンクバンド。「Rapid Fire」はジャズファンク色が濃い彼らの2ndアルバム『No Time To Burn』に収録されています。スチャダラパーの「5th Wheel 2 the Coach」でサンプリングされていることでも有名です。わずか2分弱の短いインストゥルメンタル曲ですが、テンポの良いホーンのメロディにとても元気が出ます。

T.S. Monk「Can’t Keep My Hands to Myself」(1980年)

T.S. Monk「Can't Keep My Hands to Myself」(1980年)

T.S.モンク(T.S. Monk)はジャズピアニスト、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の息子、セロニアス・モンク Jr.(Thelonious Monk Jr.)と、同じく娘のブーブー・モンク(Boo Boo Monk)、シンガーのイボンヌ・フレッチャー(Yvonne Fletcher)のファンクバンドです。ちなみにセロニアス・モンクはブーブー・モンクが15歳になった1968年に「Boo Boo’s Birthday」という曲を発表しました。

「Can’t Keep My Hands to Myself」はデビュー作『House Of Music』に収録されていて、ジャズの巨匠の血筋を感じさせる洗練された曲調が魅力のファンクナンバーです。

Ronnie Laws「Always There」(1975年)

Ronnie Laws「Always There」(1975年)

ロニー・ロウズ(Ronnie Laws)は、ジャズ・フルート奏者のヒューバート・ロウズ(Hubert Laws)とジャズ・ボーカリストのエロイーズ・ロウズ(Eloise Laws)を兄弟に持つアメリカのサックス奏者です。初期のアース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)にも参加していました。

「Always There」はサックスの力強いフレーズがポジティブな気分にさせてくれます。この曲と同様、アルバム『Pressure Sensitive』に収録されている「Tidal Wave」も強力なおすすめ曲です。

季節が変わるたびに好みの音楽が広がる

季節が変わるたびに、耳が求める音も少しずつ変わっていく。その変化を楽しむことは、音楽と長く付き合う醍醐味でもあります。春の軽やかさ、夏の開放感、秋の深み、冬の静けさ。季節ごとに聴きたくなる音楽があるということは、感性が豊かに働いている証拠です。深まる秋に聴いてみたいあなただけの “音の衣替え” を試してみませんか? “音の衣替え” を重ねると、自分だけの季節のプレイリストが豊かになっていきます。

Face Records

”MUSIC GO ROUND 音楽は巡る” という指針を掲げ、国内外で集めた名盤レコードからコレクターが探しているレアアイテムまで、様々なジャンル/ラインナップをセレクトし、販売/買取展開している中古盤中心のアナログレコード専門店。 1994年に創業し、現在は東京都内に2店舗、札幌、名古屋、京都、福岡に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。

HP

Words: Takayuki Ai

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