ヘッドホン/イヤホンにおいて、ケーブル交換、いわゆる「リケーブル」は、接続の自由度を広げるだけでなく、音の印象にも変化をもたらす要素として親しまれています。

一方で、端子の種類や接続方式の違い、取り扱い時の注意点など、あらかじめ押さえておきたいポイントも少なくありません。今回は、リケーブルの基礎とその要点について、オーディオライターの炭山アキラさんが解説します。

なぜケーブルを替えるのか?リケーブルで広がる接続の選択肢

昨今、ワイヤレスが圧倒的に優勢となっているヘッドホン/イヤホン界隈ですが、それでもワイヤード(有線)の製品群は、根強く好まれています。その大きな要因に、「ケーブルが交換できる」ということが挙げられるのではないか。私はそう考えています。

ヘッドホン/イヤホンのケーブルを交換すること、またその交換用ケーブルを、総称して「リケーブル」と呼びます。おそらくですが、20年前にはまだなかったのじゃないかなと思うくらい、オーディオ業界では新しい用語です。

それでは、リケーブルをすることで、どんないいことがあるのでしょうか。まず第一に、「いろいろな機器のジャックへ対応できるようになる」こと。ヘッドホン/イヤホンのケーブル先端へ取り付けられたプラグで圧倒的な主流は、直径3.5mmで3端子のいわゆるステレオミニプラグです。スマホやDAPなどでも、それに対応したジャックが装着されている機種がありますよね。

ATH-CK350X

一方、プロフェッショナル用のモニターヘッドホンなどでは、直径6.3mmで3端子のステレオ標準プラグが多く採用されており、ヘッドホンアンプやプリメインアンプなどの出力端子でも、一部ステレオ標準ジャックのみが装着されたものがあります。

φ6.3mm変換プラグ『AT3C1Sa

それらのアンプ類へステレオミニプラグが装着されたヘッドホン/イヤホンを接続するには、ごく簡易な変換アダプターも販売されていますが、ケーブルそのものを交換して対応する、という方法論も存在するわけです。これは、ステレオ標準プラグがデフォルトのヘッドホン/イヤホンをミニジャックへつなぐ際も、同じことですね。

また、ヘッドホンアンプには「バランス増幅回路」を持つ製品があります。一般的なアンプは回路のプラス側だけから電気を送る「アンバランス増幅回路」方式なのに対して、バランス増幅はプラス側とマイナス側の両方から電気を送ることで、振動板をガッチリと支えて強力な鳴りっぷりを聴かせることが多い方式です。

バランス増幅のヘッドホンアンプは、通常のステレオミニ、あるいはステレオ標準プラグには対応できません。あの3端子は、左右チャンネルのマイナス側を共有させることによって実用化しているものですから、プラス側だけから信号が送られているアンバランス増幅方式でなければならないのです。

それで、バランス接続するには専用の端子を使うことになります。現在ヘッドホン/イヤホンで用いられているのは2つの方式があり、一つは直径4.4mmで5端子のプラグ、もう一つはXLRキャノンプラグですが、3本ピンのインターコネクト・ケーブル用と違って、4本ピンのタイプです。インターコネクトのXLR接続は左右チャンネルに1本ずつでつなぎますが、ヘッドホンのバランス用XLR端子は1本でバランス接続が可能になります。

ヘッドホン用着脱バランスケーブル『AT-B1XA/3.0

これらの接続へ対応するため、一部の高級ヘッドホンではバランス用のリケーブルが別売で用意されていたり、中には3.5mmのステレオミニプラグを装着した標準ケーブルと、4.4mmバランスプラグを装着したケーブルを、ともに標準で付属している製品もあります。

リケーブルでヘッドホン/イヤホンを自分好みの音へ

そして、上級ヘッドホン/イヤホンマニアがもっともこだわるのが、リケーブルによって自らの愛機をより自分好みの再生音へ近づけることができる、という項目でしょうね。大手からガレージメーカーに至るまで、現在はリケーブルがかなり大きな市場となった感がありますし、お客様の音の好みを聴きながら導体や被覆、構造などを吟味して一品製作する、「リケーブル職人」というべき業者も少なくありません。ひょっとしたら、ホームオーディオのケーブルよりも音質的なバリエーションは大きいのではないか。そんな気もしてくる、昨今のリケーブル界隈です。

ATH-IEX1

リケーブル端子の種類と選び方

皆さんもリケーブルへ進まれるなら、気をつけておきたい点がいくつかあります。一つはまず、お使いのヘッドホン/イヤホンがケーブル着脱式になっていること。これは当然のこととして、問題は着脱する際の端子形状です。現在のところ、多くの製品で採用されている端子は3種類を数えることができます。MMCX型とA2DC、そして2Pinタイプです。

MMCX端子

MMCX(Micro Miniature Coaxial Connector)端子は、もともと無線機などの接続用に開発された端子で、直径が小さい割に精密なところから、アメリカの大手イヤホンメーカーで採用されたのを機に、世界へデファクトスタンダードとして広まっていきました。現在でも採用している社の多い方式として知られます。

よく普及したMMCX端子ですが、弱点がないわけではありません。細い棒状の中心導体をリング状の導体がぐるりと取り囲む、いわゆる同軸型の端子なのですが、中心導体が細く破損しやすいのですね。特にケーブル側ではなくイヤホン側の導体が破損しやすく、そうなるとかなり大変な修理案件ということになってしまいます。

ということは、せっかくリケーブルで音質変化を楽しもう、あるいはバランス対応にしてより高品位な音を楽しもうと思っても、あまり何度も交換するのはリスクが高い、ということになってしまいます。難しいものですね。

A2DC端子

MMCX型の欠点を取り除き、さらに導通が確かで使いやすい端子を目指して、オーディオテクニカが開発したのがA2DC(Audio Designed Detachable Coaxial)端子です。こちらも同軸構造ですが、中心導体はしっかり保護され、構造的にも工夫されていて、破損の心配はほとんどありません。

ATH-CM2000Ti

また、MMCXは端子の導通を損なわずにケーブルがクルクル回るように作られており、ケーブルのねじれが断線につながらないようになっています。一方、A2DCも回転を許容するものの、少し摺動抵抗を持たせてあまり回りすぎないようにしています。ケーブルや端子にねじれの負担をかけず、さらに端子自体の摩耗も抑える方策でしょうね。

そんなA2DCのヘッドホン/イヤホンに対する行き届いた配慮が好感され、徐々にではありますがリケーブル端子として採用するメーカーが増えてきています。リケーブルメーカーや工房でも、ごく普通に採用されるようになっているのが嬉しいですね。A2DCは遠からず、次世代のスタンダードとして定着するのではないか、私はそう睨んでいます。

2Pin端子

もう一つ、割とよく見かけるのが2Pin端子ですが、これはプラス側とマイナス側に同じ棒状の端子が2本並んだ、ごくシンプルな形状の端子です。回転してケーブルに対するねじれの力を逃がすことはできませんが、導通自体はしっかりとしています。

ただし、2Pin端子はよく似た形状でも上手く刺さらないものが結構多く、純正以外のケーブルを使う際には注意が必要です。特注を受け付けるリケーブル工房なら、愛機のメーカーと型番を伝えれば適切な端子で作ってくれることでしょう。

モニターヘッドホンにおけるリケーブルの考え方

ほか、ケーブルが脱着可能になっているものには、一部のモニターヘッドホンがあります。しかしこれはリケーブルで音質調整するためではなく、ケーブルの長さを変えたり、バランス対応端子のついたケーブルと交換したりするための脱着型です。オーディオテクニカでは、『ATH-R70xa』が両端ステレオミニプラグ(直径3.5mm3端子)を左右独立して装着する方式で、『ATH-M50x』では同じ端子を左側のハウジングに装着された端子へつなぎ、ステレオ信号を送り込んでいます。

ATH-R70xa
ATH-M50x

他社のモニターヘッドホンもケーブル着脱式のものは少なくありませんが、一般的な2Pinとは少し違う形状で棒状の端子が2本突き出している端子や、φ3.5mmのモノラル端子を左右に差し込むタイプなど、メーカーによって、また製品によってまちまちという感じです。基本的に純正のケーブルを使うことが前提なので、端子はそれぞれに最適と考えられるものが採用されるのでしょうね。

これだけいろいろ楽しめるのですから、やはり高級ワイヤード・ヘッドホンは本当に楽しいな、と私も感じています。皆さんのヘッドホン/イヤホンも、バランス増幅のヘッドホンアンプを加えて、またリケーブルをいろいろ試して、もっともっと自分好みに染め上げていって下さいね。

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Words:Akira Sumiyama

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