レコード再生をこれから始めたい人にとって、扱いやすさと音の良さをどう両立するかは大きなポイント。フルオートで手軽に使え、なおかつ音にも妥協したくない…そんな条件に応えるレコードプレーヤーが『AT-LP70X』です。

今回、オーディオライターの炭山アキラさんが、エントリーモデル『AT-LP60X』との違いを踏まえながら、AT-LP70XのBluetooth内蔵モデル、『AT-LP70XBT』を試聴。内蔵フォノイコライザーの有無による音の違いにも触れつつ、このプレーヤーの実力を検証します。

AT-LP60XとAT-LP70Xの違いは?

オーディオテクニカのレコードプレーヤー『AT-LP70X』は、入門機の『AT-LP60X』から型番も近く、「すぐ上のお兄ちゃん」といった存在感なのがお分かりいただけるでしょう。しかし、横幅36cm弱のAT-LP60Xに対してAT-LP70Xは幅40cmと、見た目からもグレードが大きく違っていることが分かります。一言でいうと、「本格プレーヤーの存在感へ一歩も二歩も近づいている」ということですね。

実のところ、AT-LP60Xもアルミダイカストのしっかりしたプラッターを持ち、とても簡素に見えるストレートアームも意外な感度を有していますから、レコードの音をかなりの線で再現してくれることは間違いありません。しかし、実際にAT-LP70Xと音を比べてしまうと、「あれれ、こんなに同じレコードが違って聴こえるのか」と、驚かれることでしょう。Bluetooth非内蔵のベースモデルで比較して価格は1.65倍ですから、まぁ結構な価格差ともいえるでしょうけれど、私はそれだけの価値があると確信しています。

伝統のJ字型トーンアームとVMカートリッジが生む、AT-LP70Xの音

一番の違いは、トーンアームでしょうね。AT-LP70Xのトーンアームは、オーディオテクニカが半世紀以上も大切に開発を続けてきたJ字型と呼ばれるタイプで、私のような長年のオーディオテクニカファンは、その形を見ただけで胸が熱くなるものです。

しかも、その「伝統のJ字型トーンアーム」を簡単操作のフルオート型お手軽プレーヤーへ移植するに当たり、本機ならではの機構を採用しています。トーンアームの先端へVM型カートリッジAT-VM95の発電回路を内蔵し、アームへダイレクトに交換針を取り付けてしまえばいいじゃないか、というものです。

「伝統のJ字型トーンアーム」を簡単操作のフルオート型お手軽プレーヤーへ移植するに当たり、本機ならではの機構を採用

そういう作りにするならば、カウンターウエイトを動かして針圧を調整するという作業も必要なくなります。というわけで、AT-LP70Xのアーム後端には見慣れた大きなリングウエイトがなく、そのままで針先に適正針圧がかかるよう設計されています。実力派アームを究極まで簡単な機構・操作性にする、これが最終的な形なのではないか。私はそう考えます。

AT-LP70Xのアーム後端には見慣れた大きなリングウエイトがなく、そのままで針先に適正針圧がかかるよう設計されています

AT-LP70XBTの実力を試聴で検証

AT-LP70Xの操作性は、基本的にレコードをプラッターへ乗せてPLAYボタンを押せば、アームが自動的にレコード外側の無音溝まで動いて針を落とし、再生が終わったら自動的にアームが戻って回転を停止する、というフルオート機構です。途中で再生を終えたかったらSTOPボタンを押し、いったん再生を中断して再び同じ場所から再生したいなら、リフターでアームを持ち上げておくことも可能です。

今回は、AT-LP70XのBluetooth内蔵モデルで、音を聴いてみました。まずは全くのデフォルトで、内蔵フォノイコライザーを使わず音を聴いてみましょう。

クラシックはしっかりとオーケストラの大きさを表現し、ホールに広がっていく残響も美しく描き出すことに、いささか驚きました。もう半年以上使いに使って、アクセサリーなどで音をほぼ万全に整えた『AT-LP8X』に比べれば、少し低音方向が軽かったり全体に少しザワつきを感じたりもしますが、これはこのクラスのプレーヤーで本来聴ける音ではない、そういう印象を強く持ちました。

ジャズはリズムセクションが軽快に立ち上がり、シンガーとコーラス隊の歌も生きいきと心弾むような表現をこなすことに痺れました。音の抜けの良さ、意外なコクの深さなど、とても4万円クラス*のフルオート機とは思えません。「真面目に作られているなぁ」というのが正直な印象です。

ポップスはやはり声が生きいきと弾むように飛び出し、ドラムスやベースラインの重低音も、そこそこしっかりと表現してくることに驚かされます。もちろん上級機に比べれば若干の軽さを感じる音ではありますが、音楽全体の姿を崩すことなく、軽快で活発に楽しませてくれる、この性能は大したものです。

*公式オンラインストア価格 ¥39,600(税込)

ポップスはやはり声が生きいきと弾むように飛び出し、ドラムスやベースラインの重低音も、そこそこしっかりと表現してくる

ここで、内蔵フォノイコライザーを使って音を聴いてみましょう。さすがにプレーヤーの何倍もする単体フォノイコライザーに比べると、音は少し引っ込んで情報量も若干は下がりますが、このクラスのプレーヤーに内蔵されたフォノイコライザーでも、ここまできちんと音楽を組み立て、リスナーへ届けてくれるものなのかと、ある種新鮮な印象を残してくれました。

高い品質と完成度を持つ、レコード再生入門者にとって夢のようなプレーヤーではないでしょうか。

ここまでで、AT-LP70XBTの実力が相当ハイレベルであることが分かりました。しかし、このプレーヤーにはまだまだもっと遊べるポイントが隠されているのです。少し長くなってしまいましたから、この続きはまた次回にお届けしましょう。

Words:Akira Sumiyama

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