2024年8月、「Face Records NYC店で人気の中古邦楽レコードとは?」という記事をご紹介しました。2025年の状況を聞いたところ、大きな変化があったとのこと。2025年、ニューヨークではどんな邦楽レコードが人気なのでしょうか?Face Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。
ニューヨークでは依然、邦楽が人気
2018年、ニューヨーク・ブルックリンに店舗を構えたFace Records NYC店では、開店以来、ずっと日本の邦楽レコードが注目を集めています。これまでシティポップを中心に人気を集めていましたが今年は新たな変化が──。
2024年までは山下達郎や竹内まりやといった王道シティポップが主役だった一方、2025年はインストゥルメンタル・フュージョンの名盤が支持を集め、なかでも高中正義とカシオペアが圧倒的な人気を誇る結果に。NYの音楽ファンの耳を惹きつけた “いま” の邦楽レコード。人気ランキングは以下の通りでした。
Face Records NYC店 人気のトップ5(2025年)
- CASIOPEA『MINT JAMS』
- 高中正義『Seychelles』
- 高中正義『Brasilian Skies』
- 高中正義『虹伝説』
- CASIOPEA『カシオペア』
参考までに2024年のトップ5は以下の通りでした。
Face Records NYC店 人気のトップ5(2024年)
- 山下達郎 『FOR YOU』
- 杏里 『Timely!!』
- 竹内まりや 『ヴァラエティ』
- 松原みき 『Pocket Park』
- CASIOPEA 『MINT JAMS』
それでは、2025年の人気を支えるレコード3枚から代表的な曲を紹介します。
1位 CASIOPEA『MINT JAMS』(1982年)より、「Midnight Rendezvous」

グルーヴが心地よい「Midnight Rendezvous」は、5位に入ったCASIOPEAのファーストアルバム『CASIOPEA』にスタジオ録音版が収録されています。
『MINT JAMS』は東京・銀座二丁目にある中央会館で収録されたライブアルバムですが、スタジオ版よりも更に良いグルーヴが楽しめます。カシオペアはライブに定評のあったフュージョンバンドですが、彼らの絶頂期の最高のライブ演奏が収められているレコードです。
2位 高中正義『Seychelles』(1976年)より、「憧れのセーシェル諸島」

高中正義がサディスティックスで活動中にリリースされた初のソロアルバム『Seychelles』はトロピカルな南の島を想起させるメロディが詰まった作品です。リリースされた1976年ごろは、このようなトロピカルな雰囲気のあるアルバムをリリースする邦楽アーティストが多くいました。例えば、鈴木茂『LAGOON』、細野晴臣『泰安洋行』、今井裕『A Cool Evening』、加藤和彦『それから先のことは…』、佐藤博『スーパー・マーケット』……当時の邦楽に共通する一つのトレンドです。
「憧れのセーシェル諸島」はトロピカルさが漂うギターワークが素晴らしく、フェードアウトで音が消える直前、高音をスライドさせるところまで聴きどころが満載です。控え目に入っているTAN TANのバックコーラスの魅力にも引き込まれます。
3位 高中正義『Brasilian Skies』(1978年)より、「伊豆甘夏納豆売り」

蜩の鳴き声からはじまるオープニングとメロウな曲調、エレクトリック・ピアノが夏の夕暮れを感じさせます。日本の夏の夕暮れが表現されている、これぞ和フュージョンと呼ぶべき名曲です。
ニューヨークの人気邦楽トレンドは常に変化する
シティポップブームを経て、次なるステージへと進化するニューヨークの邦楽レコードシーン。YouTubeやTikTokなどのアルゴリズムが常に邦楽の新しい魅力をユーザーに届けていることが大きいと言われています。きっかけはともかく、ジャンルを越えて愛される日本の音楽が、レコードというアナログメディアを通じて海を越え、新たなリスナーへと届いていることを実感します。今後も進化が止まらないであろうそのトレンドを、引き続き見ていきたいと思います。
Face Records
”MUSIC GO ROUND 音楽は巡る” という指針を掲げ、国内外で集めた名盤レコードからコレクターが探しているレアアイテムまで、様々なジャンル/ラインナップをセレクトし、販売/買取展開している中古盤中心のアナログレコード専門店。 1994年に創業し、現在は東京都内に2店舗、札幌、名古屋、京都、福岡に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。
Words: Takayuki Ai