日常的にマイクを使う機会が増えてきた。良い音で聴きたいと思うのと同じように、良い音で録りたいと思っても、いざマイクを使おうとなると、たくさんの種類があって、選ぶだけでも途方に暮れてしまう。話すのか、歌うのか、楽器を演奏するのか、使う人のシチュエーションもさまざまだ。
そこで、オーディオテクニカ「アストロスタジオ」のスタジオマネージャーが、マイクの基礎や使用方法、目的に合ったマイク選びを、簡単、簡潔に徹底解説。これでもうマイク選びには迷わない!
(第1回はこちら

▼第2回
「マイクとは? 種類と使い方 基礎編2」

自宅で手軽に使うならダイナミックマイク

自宅などの小さな空間でボーカルや楽器演奏を録るときは、周りの環境音や空間の響きも考慮すると、どんなマイクがお勧めですか?

部屋の広さにもよりますが、例えば6畳1間として考えた場合、防音設備が整ってるところであればコンデンサーマイクで十分です。ただ普通の6畳1間の場合は、ダイナミックマイクをお勧めしてるんですよ。どうしてもコンデンサーマイクは繊細なので。色々な環境音、エアコンの音とかありますよね。パソコンを触ってる音もあります。そういう音を気にせず録りたいのであればダイナミックマイクが一番良いです。あと、トークを収録する場合、テンションが上がって「ワッ」とか「キャ」とか発すると、コンデンサーマイクでは歪んじゃうんです。それはマイクが歪んでる訳ではなく、コントロールしてるミキサーだったりオーディオインターフェイス側で歪みやすいんです。感度が高い=入力が上げにくい、上げても上げ切らないような入力があって歪んでしまうのです。

ダイナミックマイクを使う際に、セッティングで気をつけることは?

録る場所によるんですけど、基本的に一つの場所を決めて、そこで録ります。動かず、ここでという位置でやります。ダイナミックマイクであれば、マイクの距離もそんなに気にしないで録れます。

ライブ配信のマイク

コンデンサーマイクを使うのは、録音環境も含めて少しハードルが高いですね。

ほぼ一から始めるという人であれば、ダイナミックマイクから始めて、そこから慣れてきて、もっと広く録りたいとか、もっと色々な音を入れてみたいとなれば、コンデンサーマイクをお勧めします。でも、コンデンサーマイクは隣の部屋の音も拾ってしまうほど感度の高いマイクなので、環境も変えないといけなくなります。

コンデンサーマイクは値段も張りますよね。

でも、より値段の高い、高級なマイクが凄く良いという理由もあまりないのです。シチュエーションによりますから。スポーツ中継で、サッカーのボールを蹴る音や、野球のバットの打撃音が綺麗に録れていますよね。あれはコンデンサーマイクで超指向性の凄くロングなマイクで録るんですね。なので、コンデンサーマイクには広く録るマイクもあれば、ピンポイントで録るマイクもあるんです。そういうシチュエーションで色々なマイクを選んでいく。要するに使う内容と用途が一致しないとマイクって活かされないですよ。それだけに、選ぶのも難しくなってきたというのもあるんですけど。

スポーツ中継を見てる人はマイクは意識せず、マイクを通した音を、実は映像と共に自然に楽しんでいるということですね。

サッカーでは、ゴール付近や監督がいるところ、ハーフウェーラインのところにマイクが立ってますが、結局そこのリアリティーを録りたいがためにマイクをセットアップしていくと、あれもコンデンサーマイクなので広く録れるし、しかも超指向性なのでピンポイントを狙って録れるんです。

外で録ると、風の音が大きく入ってしまうことがあります。あれは塞ぎようがないのですか?

風の音も息の音も一緒なので、必ず風防やウインドスクリーンというもので二重対策してその中にマイクを入れてます。できるだけ風の影響がないようにします。何で風が影響するかは、第1回目で言ったように、マイクは空気振動を電気信号に変換するからです。マイクが録るおおもとの素材は空気なんです。それが風に揺らされると、空気がちゃんと変換されない。電気処理としては邪魔なんですね。なので、風防やウインドスクリーンというものを付けてます。

ウインドスクリーンのイメージ

使うマイクの特徴を知ろう

他に、マイクが空気振動を電気信号に変換する際に、邪魔になることはありますか?

ボーカルであれば、一番気を付けるのはハンドリングノイズです。マイクのスタンドに付けるのでも、手で持つのでも、ノイズが出ないようにします。どのくらいこのマイクはノイズがあるんだろうというのを僕は気にします。あとは、自分の息を吹きかけてもノイズにならない。良い感じに息の音源になるようなマイクだと、凄くいいです。

それはマイクによって全然違うんですか?

違います。そこはメーカーそれぞれの特徴があるので一概には言えないですけど。

息のことまで考えると、マイクは本当に繊細ですね。

すごく繊細なんですけど、自分の声を届けてもらえる、要するにエンジンみたいなものなので、自分のエネルギーを分かって、エネルギーに合ったマイクじゃないと失敗しちゃうんです。それがマイク感度と言う言葉です。自分の声のエネルギーとマイク感度が合ってないと、もうほんとに使いづらくてしょうがないと思います。

ボーカリストも楽器プレイヤーも、使うマイクの特徴を知ってないといけないですね。

例えば一人で歌うときに、自分の声量によっては、ちょっとマイクを動かしたり口元から離したりすると、その時に音が消えちゃうんですよ。それを消さないためにミキサーでボリュームを上げちゃうと、マイクに近づけた時に音が割れちゃう。この調整が難しいので、マイクを買って初めて自分の声を録りたいときは。自分の最大限の声をマイクに対して出す。そして、それにボリュームを合わせるっていうのが一番大事です。

最大限の声を出すのは、家ではなかなか難しいですよね。

どこで出来るのかというと、カラオケルームなんですよ。マイマイクを買ったけど、家で叫べないし、どうしようかなと思ったときは、カラオケに行って試すんです。

なるほど。

カラオケ用のマイクと、自分の買ったマイマイクを有線で繋げて比較すると、より分かるかもしれません。

次回からは、実際のマイクを機種別に取り上げ、その性能や使い方を具体的に解説していきます。
第3回「オールマイティーに使えるAT2020USB 前編」