「レコードは音質がいい」「レコードの音には温かみがある」とはよく耳にしますが、いまの令和の時代において発売されたレコード、その音質はいかに?ここではクラシックからジャズ、フュージョン、ロックやJ-POPなど、ジャンルや年代を超えて日々さまざまな音楽と向き合うオーディオ評論家の小原由夫さんが最近手に入れたレコードの中から特に<音がいいにもほどがある!>と感じた一枚をご紹介いただきます。
トリビュート盤で味わう、中森明菜楽曲の新たな魅力
”トリビュートアルバム” とは、特定のミュージシャンに敬意を表して制作されるアルバムのことで、原曲や主役アーティストに対して複数のアーティストが参加してのカバー演奏を集めたアルバムである。逝去されたアーティストに対する追悼として企画されるケースが多いが、デビュー何周年とか、引退といった節目に作られることもある。
今回採り上げた『中森明菜 Tribute Album “明響” +1』は、中森明菜のヒット曲を13名のミュージシャンが歌い継いだトリビュート作。昨年5月1日(中森のデビュー43周年記念日)にCDがリリースされ、昨秋に2枚組でレコード化された。CDよりも1曲多い全14曲の収録で、いずれもシングルヒット曲ばかり。代表的な参加ミュージシャンを列記すると、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、土岐麻子、Ado、玉置浩二、鈴木雅之、CHEMISTRY、JUJU、中島美嘉など。中森明菜はまだ存命だし、歌手活動を先頃再開したばかりである。本作はつまり、彼女に対する現役歌手たちからの大いなるリスペクト集なのである。ジャケットのイラストもなかなか素敵だ。
A-3「セカンド・ラヴ」は土岐麻子が歌う。ストリングスとアコースティックギター中心のアンサンブルが優しい世界観を作り出している。透明感の高い声の土岐の歌唱は、この切ない曲想に新しいイメージを与えており、全体はたいそうオーガニックなムードだ。
玉置浩二が歌うB-2「サザン・ウィンド」は、アーシーでグルーヴィーな雰囲気のR&B調。玉置の表現力の豊かさと、そこに絡むワウ等のエフェクターを駆使したギターが軸のアンサンブルとが相まって、全体はなかなかに妖しい空気感である。
C-2「DESIRE -情熱-」はJUJUの独壇場だ。自分の持ち歌のような堂々とした歌唱で、しかもバッキングのロックビートのアンサンブルが滅法上手い(クレジットのパーソネルを見て納得)。スピード感があり、リズムはタイト。ホーンセクションも分厚く響く。
こうした大勢のミュージシャンがそれぞれ単独でスタジオ録音した音源を集めたオムニバス盤の場合、音の統一、整合を図るのは大仕事だ。その辺りは、百戦錬磨といってよい「ミキサーズ・ラボ」所属の二人の匠(マスタリング/菊地功、カッティング/加藤拓也)の手腕に負うところが大きいといえよう。
そして何より、これら楽曲をひとつにまとめ上げたプロデューサーの苦労は並大抵ではなかっただろうと思う。
Words:Yoshio Obara