横浜市の野毛にある日本最古のジャズ喫茶『ちぐさ』。
昭和8年の開業以来、創業者である故 吉田衛氏はジャズの普及と若いミュージシャンの育成に奮闘し、日本のジャズ界の発展に多大な功績を残した伝説的な人物だ。
地域の開発計画にともない2007年に一度閉店するものの、ちぐさを愛する地元住民からの融資が集まり五年後の3月11日に再び看板を上げた。吉田氏の亡き後もちぐさを後継し、発展させるために活動しているメンバーに今回お話しを聞いてきた。

店内のスピーカー
テーブルの上のコーヒー

店内はウッド基調の壁に数々の名ジャズプレイヤーの写真が飾られており、これぞジャズ喫茶という雰囲気が漂っている。お昼の時間帯はジャズ喫茶としてコーヒーやビール、ワインなどが楽しめる。
所蔵レコードの一覧が見れるリストブックがあり、お客さんからのリクエストを中心にレコードをかけている。夜の時間帯はジャズバーとして、ウィスキーやジン、ウォッカなどのハードリカーに加え日本酒や焼酎など、多種類のアルコールが揃っている。

店内の棚に並ぶレコード
アンプのコントローラー

およそ90年前から受け継がれてきたオーディオシステムは、常連客の一人であったビクター社のエンジニア高橋宏之氏がちぐさのためだけに日本で唯一作り上げた、4ウェイマルチアンプシステムを使用した特注品。フロントパネルにはCHIGUSAのエッチングが光り輝く。真空管アンプ並みに豊かでスピード感ある素直な音が味わえるようになっている。

また、若手のミュージシャンを応援し続けた吉田氏。その意思を継ぎ「ちぐさ賞」という若手のミュージシャン向けのジャズコンペを毎年一回主催している。優勝者はちぐさが運営する「ちぐさレーベル」からレコードとCDでデビューができるようになっており、これまで既に八枚がリリースされている。

現在の店舗は残念ながら2022年4月10日に一度閉店。建築家の山本理顕氏により建て替えられ、2023年の90周年記念にあわせて、2012年のちぐさ再建日と同じ日付の3月11日の再オープンを目指している。
新しい店舗ではちぐさのオーディオ、椅子やテーブルのアーカイブ機能を楽しめるのに加えて、新たにライブスペースが併設される。建築期間中の現在は横浜市内に仮店舗を借りて、2022年5月に営業を開始した。
ジャズを愛し、ちぐさを愛する人々によって運営されている日本最古のジャズ喫茶。これからも地元の人々に愛され、ジャズの普及に貢献し続けていく場所になるのだろう。

創業者の吉田衛氏

ジャズ喫茶ちぐさ

〒231-0064
神奈川県横浜市中区野毛町2-94
(仮店舗/〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-1-1
MM21グランモール公園1F)

Photos & Words by Masahiro Takai