レコードって結構いいお値段しますよね。 レコードをたくさん集めたいけど、やはりお財布への負担は減らしたい。 そう考えると、レコードショップの店頭やリサイクルショップなどで叩き売られている格安レコードの存在が気になります。

いわゆる「ジャンクレコード」と呼ばれるものですが、あれってどうなのでしょう?買って良いものなのでしょうか?今回は、音楽家であり録音エンジニアでありオーディオ評論家でもある生形三郎さん流のジャンクレコードの買い方をご紹介いただきました。

ジャンクレコードの「傷」には気をつけて

実は、筆者は結構ジャンクレコードを買いますし、そこから愛聴盤も生まれています。 知り合いにそのレコードを聴かせて、「この盤いいですね、どこで買ったんですか?」と聞かれて、「いや、実はこれ100円で買ったんですよ(笑)」と言って喜びや驚きを共有するのも、なんだか嬉しいです。

ジャンクレコードが安く売られているのには、大きく3つの理由があります。 おもに「著しく大量に出回っているため値段が安価なもの」、「誰も知らない不人気なタイトル」、そして、「ダメージを受けているもの」の3つです。 この中で注意しないといけないのが、最後の「ダメージを受けているもの」です。

ダメージにも色々ありますが、再生して楽しむという点でもっとも注意したいのが、盤面が汚れていること、傷がついていること、盤が反ったり歪んでいる、といった「盤自体」へのダメージです。

ジャンクレコードの「傷」には気をつけて

最も分かりやすいのは「傷」で、溝とは別方向に出来た引っかき傷や線状のキズがあるものは買うのを避けましょう。 これは、再生時に大きなノイズを発生させるもので、修復することは出来ないものだからです。 薄っすらとした浅い傷なら問題ない場合も多いですが、できるだけ避けるのが無難です。 傷の判断は、後述する「検盤」や「検聴」で確認するのがベストです。

汚れや盤のコンディションも要チェック

また、「大きな汚れ」も分かりやすいダメージです。 ホコリがついている、指の腹の形をした手脂のようなものがたくさんついている、小さなゴミがたくさん乗っている、これらの汚れは洗浄できれいになるので問題ないです。 逆に、内袋のビニールのシワがほとんどなく、盤を取り出したときにレコードがきれいな状態であれば掘り出しものです。

レコードのクリーニング方法についてはこちら:レコードをいい音で聴くためのお手入れ 〜オーディオライターのレコード講座〜

盤の反りや歪みも、レコードを横から見れば一目瞭然です。 反りや歪みは、再生音が波打ってノイズの発生やピッチの乱れに繋がるほか、大事なカートリッジを痛める原因にもなります。 歪みを平に戻すのは非常に困難なので、大きく反ったものの購入は避けるようにして下さい。

見えないダメージは耳で見つけよう

気をつけたいのが、目視できない汚れや傷です。 一見キレイでも、針を落として聴いてみると常時パチパチとした音が乗っている場合があります。 このパターンは、根気よく洗浄すれば大抵の場合はノイズが消えます。 しかしながら、状態の悪い針先などで繰り返し再生されて溝が損傷した盤では、常にジリジリとしたノイズが乗り、どんなに洗浄しても消えることはありません。 さらに、溝が著しく摩耗している場合、抑揚のないのっぺりとした音や、こもった音で再生されます。 溝の損傷なのか汚れなのか、ノイズ原因の判別は洗浄してみないと分からないので、「検聴」した際にノイズが常時たくさん鳴っている場合は、覚悟して購入するようにしましょう。 ただ、ジャンク価格なので、買って駄目でも諦めがつくのがよいところです。

ジャンクレコードの見えないダメージは耳で見つけよう

以上を考慮して、汚れがついたものであっても、大きな傷や反りがなければ購入して問題ありません。 ただ、購入後の洗浄が必要になります。 逆に言えば、だからこそ安い、と言えます。 洗う手間がある分、お安くなっているのですね。 ですので、洗浄さえすれば、ジャンクレコードが通常のレコードに化ける場合があります。 これがジャンクレコードの魅力だと私は思っています。 筆者流のジャンクレコード洗浄方法については、また別の機会にご紹介しましょう。

ジャケットやライナーノーツの状態は?

続いて、盤面以外へのダメージについてです。 ジャケットへのダメージとして多いのが、「底抜け」といったものです。 これは、ジャケットの下部がレコードの重みで破けてしまっているもので、これが理由で値段が下がっていることがよくあります。 同様に、ジャケットの糊しろを留める糊が不良になって分解しかかっていたり、破れていたりする場合もあります。 音質には影響ありませんが、見た目を気にする場合は、避けたほうが良いでしょう。 同様に、ライナーに書き込みがあったり、ライナー自体が紛失している場合もあります。 筆者の場合、気になるタイトルであれば、状態が悪くてもまずジャンクで購入して内容をチェックしてから、改めて状態の良いものを買う、という買い方もよく行ないます。

買う前に目と耳でレコードの状態を確認すること

最後に、先ほど述べた「検盤」や「検聴」について簡単に説明します。 「検盤」とは、実際に盤を手にとって状態や付属品のチェックすることを言います。 レコードを買うとき、レジで「検盤しますか?」と聞かれるのがそれです。 ジャンクレコードの場合は、ビニールで封をせずそのままお店に置かれていることも多く中身をチェックしやすいですが、念のためお店の人に許可をとってから検盤するのがマナーです。

なお、検盤時のチェック項目として、センタースピンドル穴(レーベルシール中央の穴)周辺をチェックする、というのも一つのポイントです。 このシール部分に、プレーヤーのスピンドルによる凹み傷(イモムシが這ったような線状の凹み)が多数ある場合、前の所有者は、そのレコードをわりと手荒に扱っていたということが推察できます。 よって、盤の状態が悪い場合も多いです。

「検聴」は、その名の通り実際に音を聴いてチェックすることをいいます。 検聴用のプレーヤーやヘッドホン等を置いてある店であれば、お店の人に頼むと、実際に検聴させて貰うことが出来ますので、気になる場合は検聴してから購入すると失敗が少なくなるでしょう。

以上、ジャンクレコードの選び方でした。 運任せのところもありますので、失敗もありますが、それも含めて楽しめるのが、ジャンクレコードだと思います。 ぜひともトライしてみて下さい。 自分にとっての掘り出し物に出会えたときの喜びは、一生モノですよ!

Words:Saburo Ubukata