癒しとウェルネスをテーマに、Face Recordsからのおすすめレコードを毎月お届け。 12月のテーマは「年末年始のお掃除が捗る音楽」。お掃除が面倒くさいという方やもっとテキパキと掃除できないかなと考えている人も、大掃除の時間がもっと楽しくなるようなおすすめの音楽を、Face Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。

掃除と音楽の気になる関係

このコラムを読む前から、「実は掃除と音楽の関係が気になっていた」という方、もしかしたらそのきっかけは学校の掃除の時間に流れていた音楽だったという人も多いかも知れませんね。私もその一人です。

「学校で掃除の時間にかかる音楽」で調べてみると、ショパンの「華麗なる大円舞曲」、ブラームスの「ハンガリー舞曲」、モーツァルトの「トルコ行進曲」などが代表的らしくて、確かにどれも学校の掃除の時間に流れていた気がします。これらの楽曲を流す意図は、たぶん「みんなでテンポ良く手を動かして、綺麗に掃除しましょう!」ということなのでしょうね。
今回はこれらの楽曲にはあえて触れず、その意図をくみ取った選曲をレコード屋らしくしてみたらどうなるか、というテーマで書いてみました。

音楽は、掃除をする際のテンションを一気に引き上げてくれる不思議な存在です。音楽の力を借りて、大掃除をしてから気持ちよく新しい年を迎えましょう。

寒い冬にはホットなソウル・ファンクで

年末年始というところもポイントで、この時期にぴったりなのは、個人的にソウル・ファンク・ディスコのリズムです。寒い冬がホットになる音楽を恋しくさせるのか、特に年末の慌ただしい雰囲気に合うのはソウル・ファンク・ディスコだと感じます。

同じテンポの良い音楽でも縦ノリのロックは個人的には春から夏の方が合うなーと思います。ですので、今回はソウル・ファンク・ディスコを中心にお掃除が捗りそうな音楽をご紹介します。

毎回ではありますが、特に今回はアナログレコードで聴いていただきたいと願います。アナログレコードから流れる温かみのある音楽は、また格別の魅力があります。

Heaven Must Be Missing An Angel / Tavares

まず最初に。

掃除は始まりのテンポが大事です。最初から気分をどれだけ高めて、テンポの良い掃除を始められるか、一曲目にかかっています。

Heaven Must Be Missing An Angel / Tavares

思わず体が動いてしまうリズムとメロディー、コーラス。この高揚感は言葉で説明するより聴けばわかる。この高揚感に乗って、テキパキと掃除の手を動かしましょう!

Tavares(タヴァレス)はアメリカのコーラスグループで、ソウル・ディスコのヒット曲が多数あります。邦題が「ディスコ天国」というのはちょっと違和感を感じますが。

Do It To My Mind / Johnny Bristol

高揚感が出る曲が続きます。

Do It To My Mind / Johnny Bristol

都会的なノーザンソウルの真髄を感じさせるメロディーと軽快なビートは、聴く人に空へ飛ぶような感覚を与えます。

心地よいグルーヴで掃除は順調にはかどりそうです。

I Can Understand It / Kokomo

I Can Understand It / Kokomo

Kokomo(ココモ)はイギリスのいわゆるブルーアイドソウルのバンド。メンバー全員が白人ですが、ここまで黒人音楽のフィーリングを出せることに感動します。

元King Crimson(キング・クリムゾン)のMel Collins(メル・コリンズ)がサックスを担当、バンド名であるKokomoは、 “It ain’t Kool to be Kool no mo” (もうクールでいることはクールじゃないよ)という、彼らの曲のフレーズから来ています。

デジタル音源として紹介できるのはライブ録音だけでしたが、ぜひレコードを探してスタジオ録音版を聴かれることをお勧めします。

You / Maze featuring Frankie Beverly

You / Maze featuring Frankie Beverly

そろそろ高揚感も落ち着きたいところ、メロウ・グルーヴで一服しながら掃除も仕上げの段階でしょうか。

この曲が入ったアルバム『Live In New Orleans』は名盤として知られていますが、できれば、1枚目のA面(1曲目「You」→2曲目「Changing Times」→3曲目「Joy and Pain」)を通しで聴いて欲しいです。レコードの一面、更にアルバム全体を聴くと、Maze(メイズ)のメロウ・グルーヴの魅力が一層際立ちます。

You’re On My Mind / Rose Royce

You're On My Mind / Rose Royce

ついでに車もピカピカに掃除しましょう。

この曲は映画『カー・ウォッシュ』の挿入曲として使われました。『カー・ウォッシュ』はロサンゼルスのダウンタウンにある洗車場で、安い給料で白人のボスにこき使われながらも楽しく仕事をする従業員たちの一日を追うコメディ映画です。

この映画の洗車場では、いつもソウルナンバーを流してノリながら仕事をしていますが、ボスはそれが気に入らずクラシック音楽に切り替えてしまうシーンがあって、その途端に全員がわざとスローな動きで仕事をする、無言の抗議をします。今回のコラムで「掃除と音楽の関係って何だろう」と考えていたら、そのエピソードを思い出しました。

お気に入りの音楽でよいお年を

年末のこの時期、心地よい音楽がお掃除の助けになります。年の瀬を感じながら、音楽とともにお掃除を楽しんでください。楽しいお掃除のひとときが、新しい年の始まりを特別なものにしてくれることでしょう。

新たな年が、たくさんの音楽と出会える素敵なものになりますように。

Face Records

Face Records

1994年に横浜でメールオーダーのお店として始まり、1996年に渋谷区宇田川町に第1号店を開店した。 中古盤中心のアナログレコード専門店。 ヨーロッパやアメリカで買い付けたレコードと日本国内で集めたレコードを中心にセレクトしている。 現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。

HP

Words: Takayuki Ai