特大のおにぎりを握って食べるリール動画がInstagramで注目を集める、モデルの小竹ののかさん。オリジナリティあふれる具材をあつあつのご飯で握り、大きな口を開けて美味しそうに食べる姿には飾り気がなく、心から楽しんでいる様子が伝わってくる。
Omusubi Teshimaは、50年以上の歴史を持つ老舗おにぎり屋。ここの女将で “看板娘” の弘子さんは82歳ながらもYouTubeで著名人とコラボするなどアクティブに発信を行う、おにぎり職人だ。
SNSや動画サイトで、おにぎりとともに発信を続ける小竹さんと弘子さん。私たちはなぜ、おにぎりに惹かれてしまうのか。おにぎりには、人間本来の感性を刺激する何かがあるのだろうか?もしかすると、その何かこそが私たちが心を動かされる “アナログ” の本質を宿すものなのかもしれない……
そんな考えから、孫とおばあちゃんほどの歳の差のある小竹さんと弘子さんを引き合わせて、オーディオテクニカがプロデュースする蚤の市『Analog Market(アナログマーケット)』(以下、アナログマーケット)にコラボ出店をオファー。「人間はアナログ、アナログは未来」を掲げるイベントで、実際におにぎりを提供してもらう。
2025年11月2日・3日に来る築地本願寺でのイベントを前に、小竹さんは弘子さん、そしてOmusubi Teshimaを現在切り盛りする2代目・健太さんのもとへ、おにぎり修行に繰り出した。
おにぎりは、強く握らないほうがいい?
小竹さんが、Omusubi Teshimaさんとのコラボに興味をもった理由を教えてもらえますか?
ののか:私はあるときパッと思い立って握り始めたので、昔から長くおにぎりを握っている方が、どんな握り方をしているんだろうとか、どんな考えを持っているんだろうってことにすごく興味があったんです。
先ほど、弘子さんからおにぎりの結び方のレクチャーを受けてみて、いかがでしたか?
ののか:私のおにぎりと違ったのが、やっぱり握り方で、「こんなに握らなくてもいいんだ!」っていうのがすごい学びでした。実際食べてみたら、やっぱ美味しくて。私、毎回ギュッギュと握っていたなって思って、すごい発見でした。
味も自分が普段作っているおにぎりとは全然違うんです。ふんわり握ったおにぎりを今日食べたらすごい優しくて温かいというか、美味しく感じました。
健太:ありがとうございます。うちのおにぎりは、見た目は素朴ですけど、中身は、真心と笑顔がギュッと詰まっています。
弘子さんはおにぎりを結ぶとき、どんなことを大切にしていますか?ふんわりさせるにあたって、どういうことを意識されているんでしょうか。
弘子:まず、そんなに握らないということですね。手のひらに乗せて、海苔で形をとる。ギューっと結んじゃうと、やっぱり美味しくない。美味しく、ただ握るだけ。何も考えていないですね。お客さんの顔を見ながら、握っています。
ののか:弘子さんのおにぎりはふわふわで、お米を1粒1粒すごく感じるなって思ったんですよね。私みたいにギュッギュと握らないからなんでしょうね。
小竹ののかが、おにぎり動画をアップし始めて気づいた“アナログ”の手触り
小竹さんは、そもそもなぜおにぎりを握るようになったのでしょうか?
ののか:朝ごはんのリール動画を撮っていて、最初はヨーグルトとかをアップしていたんですけど、あるとき、急に炊きたてのご飯で、自分の手で握ったおにぎりを食べたいと思って。
そのときに初めておにぎりを握ったリールを出したんです。そんなふうに思いがけず投稿したものを、すごくたくさんの人が楽しんで見ていただけるようになったので、私も楽しくて続けて投稿しているという感じです。
Omusubi Teshimaはこの場所で、どれくらいやっていらっしゃるのでしょうか?
健太:僕が始めてからは17年ぐらい経ちますね。もともと父が1968年に、今の場所の4軒くらい隣で始めて。で、父が引退して僕が引き継いでリニューアルして、ここで17年ぐらいという感じです。
もともと、お米屋さんとして創業されたんですよね。なぜおにぎりを出すようになったのでしょうか?
弘子:お米を売るだけじゃ将来ダメになってしまうから、お米を使っておにぎりをやろうと考えたんです。
Omusubi Teshimaは手作りにこだわっていますが、機械で握ることは考えたことはないのでしょうか?
弘子:最初は機械を借りてやったことがありました。だけど手で握ったほうが時間もかからないし、ふんわり美味しいものができるんですよ。それでもって手作りになりました。
今はコンビニに行けば、おにぎりは買えますよね。でも小竹さんは、わざわざ自分の手でおにぎりを握ろうと思った。その気持ちをご自身でどう見つめていますか?
ののか:私自身、情報ばかりに追われて気がつかない間に感情が薄れた人間になっていっていた気がするんです。スマートフォンの世界にばかり囚われていた自分が、おにぎりを通じて「人間に戻れる」って感じがあったというか。
手を動かしたり、食材を直接自分の手で触るとか、そういうことによって心の濁ってた部分が洗われる感じがして、自分の中で前向きになれるんです。おにぎりを結ぶことで、明るい人間になるという感じがするなって思います。
便利で、何でも気軽にできる時代になったからこそ、オーディオテクニカは、少し手間でもスマホではなくレコードで音楽を聴いてみたり、自分の手で実際にやってみるアナログな手触りを大切にしているんです。
健太:僕はレコードで音楽を聴くのが好きだから、その感覚はわかる気がします。昔から「心が入ってるもの」が好きで、おにぎりに限らず何でも手をかけたものに惹かれるんですよね。
自分の手で握るおにぎりは、生活で一番身近なアナログなものともいえますし、小竹さんのお話にも通じるものがある気がします。
ののか:今ってSNSを見ると、キラキラして見えるものばかり目に入るじゃないですか。人間、全部が全部キラキラしているわけじゃないのに、誰しも他人と自分を比べちゃう。私もそれでちょっと気持ちが落ちてしまうことがあって。そういうことが無意識のうちにどんどん積み重なって、心が濁った感じになってしまうというか。
実際に、小竹さんはおにぎりを自分の手で握ってみたことで、気持ちが少しほどけるところがあったわけですよね。
ののか:そう感じています。
いくらデジタル化が進んでも、人はアナログな生きものですもんね。
弘子:考えすぎないのがいいんだよね。おにぎりだけじゃなくて、何事も。
ののか:そうかもしれないですね。考えすぎちゃうとよくないんだろうな。
便利さからちょっと離れてみる。アナログな手触りが人と未来をむすぶかも
レクチャーを経て、Analog Market出店に向けた今の気持ちを教えてください。
ののか:Omusubi Teshimaさんのことは今回の話で初めて知ったんですけど、仙川には高校生のときによく通っていたんです。企画のきっかけはInstagramだったけど、仙川のお店とご一緒できるということにすごく運命だなって。
自分が素直に「食べたい」と思っている気持ちを届けることが大切なのかな、と今回のレクチャーを通じて改めて感じました。「おにぎり、美味しそうだな」と思って、Instagramも見ていただけるのかなって。だから自分が美味しそうって思うものを提供することは、これからも忘れないようにしたいです。
人の手で握ったおにぎりからは、やっぱりいろんな気持ちが伝わってきますよね。
健太:同じ店でも、僕と母で握るおにぎりは違いますからね。僕からすると母のおにぎりはもう握ってない。ただ包むだけ。1、2回、包んであと海苔で形をとっているだけなんですよね。だから、たまに崩れちゃってることがあるけど(笑)。
ののか:でも、なんかそのちょっと崩れているくらいが、もうむしろ正解なんじゃないかなって思いました。それくらいが美味しそうに見えます。
弘子:私はもう、美味しく、ただ握るだけですから。
健太:やっぱり人っていろんな感情があるけど、結局それ全部ひっくるめて、一人の人というか。Analog Marketでは、そういうことを肌で感じてもらえるといいのかなと思います。
便利さからちょっと離れる。そうすることで人間らしさや感性が刺激されるのかもしれないですね。当日の見どころを教えていただけますか?
ののか:今回、自分の握ったおにぎりを人に食べてもらうのは初めてなんです。だから自分が食べて美味しいと思える幸福感とはまた違った、幸せが待ってるんじゃないかなって楽しみにしています。この手作りならではの温かさ、よさを感じていただけたら嬉しいです。
Analog Market
produced by Audio-Technica
会場:
築地本願寺(住所:東京都中央区築地3丁目15−1)
開催日時:
2025年11月2日(日) 10:00~20:00(予定)
2025年11月3日(月・祝) 10:00~17:00(予定)
※天候状況などにより、変更となる場合がございます。
入場料:
無料
「Analog Market」はオーディオテクニカ創業60周年をきっかけにはじまった蚤の市です。レコードをはじめ、古物、ヴィンテージ、陶器、アート、インテリア、フレグランス、観葉植物、魚、野菜、果物、ワインやクラフトビールなど、衣・食・住、さまざまなアナログを、五感を通して楽しめます。 さらに、ハイエンドオーディオで音に没入するディープリスニング空間やライブ、トーク、ものづくりワークショップなどアナログに共鳴するクリエイターたちと一緒に創造性を掻き立てる場をつくります。
Analog Market HP Analog Market Instagram 小竹ののか Instagram おむすび手島 InstagramWords:Kei Kawaura
Photos:Ashley Chu
Edit:Shoichi Yamamoto