今、世界的な再注目の最中にあるアナログ・レコード。 デジタルで得られない音質や大きなジャケットなどその魅力は様々あるが、裏面にプロデューサーやバックミュージシャン、レーベル名を記した「クレジット」もその1つと言えるだろう。

「クレジット」――それは、レコードショップに並ぶ無数のレコードから自分が求める一枚を選ぶための重要な道標。 「Credit5」と題した本連載では、蓄積した知識が偶然の出会いを必然へと変える「クレジット買い」体験について、アーティストやDJ、文化人たちが語っていく。 あの人が選んだ5枚のレコードを道標に、新しい音楽の旅を始めてみよう。

クニモンド瀧口が考える「アナログ・レコードの魅力」

父親がレコード好きということもあって、小さい頃からレコードが身近にあった。 VINYLのケミカルな匂いと、少しカビ臭いジャケットの匂いは、今でもレコードを触ると、その頃の記憶が浮かんで懐かしい気持ちになる。 また、レコードを聴く時の一連の所作が好きだ。 ジャケットからレコードを出して、レコードクリーナーで埃を落とし、ターンテーブルにセットして、針を落とす。 「プチッ」という音がして、音楽が流れる。 その瞬間、「音楽っていいな〜」と、つくづく思うのだ。

クニモンド瀧口が「クレジット買い」した5枚のアナログ・レコード

宮川 泰「ワンサくんのママ」

宮川 泰「ワンサくんのママ」

幼少期の頃、特に宇宙戦艦ヤマトが好きで、『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のLPレコードを買った。 家でレコードを聴きながら、ジャケットを眺めていると宮川 泰の文字。 どこかで見た記憶があって、レコード棚を調べると昔買った7インチレコード「ワンサくん」も宮川 泰によるものだった。 大人になって見返すと、カウントバファローズのリズム隊だったり、当時日本コロムビアで活躍していたジャズミュージシャンが演奏しているのに驚いた。

Minnie Riperton『Come To My Garden』

Minnie Riperton『Come To My Garden』

小学生の頃、ベストヒットUSAで流れていたEarth, Wind & Fire(アースウィンド&ファイアー)が気になって、レンタル・レコード屋で数枚借りた。 その中にあったアルバムが『That’s the Way of the World(邦題:暗黒への挑戦)』。 タイトル曲をとにかく気に入って、調べるとCharles Stepney(チャールズ・ステップニー)の名前が。 20代になりレコード屋店員から、懐かしいその名前が出て、教えてもらったのが、彼がプロデュースを手掛けたこのアルバムだった。 想像以上に素晴らしくて、いまでもお気に入りのレコードとなった。

The City『That Everything’s Been Said』

Minnie Riperton『Come To My Garden』

冒頭からインパクトのあるThe Mamas & the Papas(ママス&パパス)「California Dreamin’(邦題:夢のカリフォルニア)」は、小学生の僕にも影響を与えた。 そして、もう一枚、この頃好きだった洋楽が、隣に住んでいた大学生のお姉さんから教えてもらったCarole King(キャロル・キング)の『Tapestry(邦題:つづれおり)』。 18歳の頃、PIZZICATO FIVEがきっかけで、Roger Nichols(ロジャー・ニコルス)を聴くようになり、「SNOW QUEEN」という曲が好きになる。 そこから辿りついたのがThe City(シティ)。 そして、Lou Adler(ルー・アドラー)の名前で全てが繋がった。

Laura Nyro『Christmas & Beads Of Sweat』

Laura Nyro『Christmas & Beads Of Sweat』

中学生の頃、山下達郎にハマりラジオを聴くようになる。 ラジオの中で「The Rascals(ラスカルズ)」という名前をよく話していた。 彼の1st アルバム『サーカス・タウン』が海外録音という事を知り、プロデューサーのCharles Calello(チャーリー・カレロ)が気になって買ったアルバムが、同年に発売されたLaura Nyro(ローラ・ニーロ)の『SMILE』。 そこからLaura Nyroを聴くようになり、『Christmas & Beads Of Sweat(邦題:魂の叫び)』をThe RascalsのFelix Cavaliere(フィリックス・キャバリエ)がプロデュースしていた事に繋がった。

Muriel Winston『A Fresh Viewpoint』

Muriel Winston『A Fresh Viewpoint』

20代の頃、某レコード店でジャズバイヤーをやっていた。 ジャズ・ファンクからスピリチュアル・ジャズにハマり、レーベル単位でアルバムを聴くようになった。 そこで出会ったレーベルの一つが〈STRATA-EAST(ストラタ・イースト)〉。 モノクロのジャケットがカタログに多い中、部屋に飾りたくなるような素敵なジャケットだと思ったのが本作。 〈STRATA-EAST〉からリリースしているミュージシャンも多数参加、悪くはないだろうと思い聴いたのだが、これが思いの外素晴らしい内容だった。

クニモンド瀧口

流線形/ CMT Production

2003年に流線形として音楽活動をスタート。 近年の世界的なシティポップ・リバイバルの流れで、2ndアルバム『TOKYO SNIPER』が海外からも高く評価される。 プロデュース、楽曲提供、アレンジの代表作として、一十三十一『CITY DIVE』、ナツ・サマー『SUN KISSED LADY』、古内東子「Enough is Enough」などがある。 流線形/一十三十一名義でNHKドラマ「タリオ 復讐代行の2人」の劇伴を担当。 2022年、堀込泰行(exキリンジ)をフューチャーしたアルバム『インコンプリート』を発売。 最新作は、児玉奈央をフューチャーした「遠い水平線」。 また、2020年からシティー・ミュージックを選曲・監修したコンピレーション・アルバム『City Music Tokyo』シリーズを発売。 CMT Productionとして、グラフィックデザイン、ブランディングなどで、音楽を中心に多岐に渡り活動している。

HP

Edit:Takahiro Fujikawa
Photgraphy(portrait):Ryosuke Kikuchi