沖縄市の中心街コザはかつては歓楽街として栄え、米軍基地を背景に外国人向けのバーやクラブが数多く点在していた。現在ではまるで50年代からそのまま時間が止まったかのような建物や看板が残り、琉米文化の名残を感じる。
創業者の故・洲鎌盛雄氏は2009年に定年退職を迎えたことを契機に、自らのオーディオ機器と交響曲のコレクションを揃えた『コーヒーハウス響』の看板をあげた。店名には自身の息子と同じ名前をつけた。地元のオーディオ仲間や音楽を愛する人たちの行きつけの場所になっていたが、洲鎌氏の他界により2019年にその看板は一度下ろされた。しかし30年来のオーディオ仲間だった兼城和彦さんと中村憬さんの手によっておよそ半年後に復活し、現在も営業を続けている。

店内のスピーカー類
TANNOYのウェストミンスターのスピーカー

店内に残された音響機器やレコードの殆どはそのまま引き継がれている。ビンテージのジュークボックスやジャズ関連の古いポスター、そして色褪せた壁。まるで過去にタイムトラベルしたかのような錯覚を覚える。
そんなノスタルジックな空間で一際目立つ巨大なスピーカーと真空管アンプ、金色の紋章が輝くスピーカーはTANNOYのウェストミンスターだ。Luxman MQ-360やSunvalley Romantic Glass Amplifier、UESUGI Tap-6などのアンプも並ぶ。その他にも常連客が持ち込んだテープリールのレコーダーなどが置いてあり、音響好きなら眺めているだけでワクワクするだろう。

店内のスピーカー類

店内にはクラシックを中心に、700枚ほどのレコードから選ばれた曲が流れている。お客さんが自らのレコードを持ち込むこともあるそうで、そんなリクエストにも沖縄らしく解放的で緩やかに対応してくれる。

創業者の故・洲鎌盛雄氏の写真

昔からの常連客に加えて、最近ではSNSなどの影響で若い世代の客も増えてきている。ここでしか味わえない雰囲気を求め、県外から訪れるお客さんも多いそうだ。メニューの中では、同店専用に沖縄市内で焙煎された豆で淹れたコーヒーやホットサンドなどが人気だ。ウェストミンスターの上に飾られている洲鎌氏の写真とコーヒーカップが目を引く。沖縄の大らかな雰囲気、素敵な音とこの場所を引き継いだ人々の温もりと先代への敬愛が感じられた。なんだかほっこりする空気感で満たされている。

コーヒーハウス響

〒904-0006
沖縄県沖縄市八重島2-7-48
 TEL: 070-8595-4881

Photos & Words by Masahiro Takai