あらゆる物事のデジタル化が進む昨今。 その一方で、足りなくなってしまった「手触り」に飢えた人たちの間でレコードの需要が高まっており、過去の盤が再発されたりと人気が再燃。 「アナログ」があらためて評価されている。 2000年代後半から、DJとして世界中を飛び回りながら出会ったほとんど初見のようなレコードの数々を自ら手に取り、そのひとつひとつに針を落としながら地道に明日の音を発掘し続けてきたCHEE SHIMIZUこと、清水啓達氏が下井草で営むレコード店「PHYSICAL STORE」を舞台に、店主自らピックアップした選りすぐりのアナログレコードにVMシリーズの針を落とし、思い思いに音楽を聴き比べてもらった。

VMシリーズの安定感と安心感

査定中も盛り上がる音楽談義

DJとして活躍されているCHEE SHIMIZUさんですが、当然、針もレコードと同様に欠かせないアイテムであり、長いDJ人生のなかで自身の求める音にチューニングし続けてきたことと思います。 本企画を楽しみにしていただいていたとのことですが、まずはどのレコードからかけていきましょうか?

SHIMIZU:何をかけようか迷ったんですけど、各パートの周波数帯域が分かりやすくて、左右の定位だけではなく、上下や前後も立体的に聞こえるレコードがいいと思い、まずはこのレコードをリファレンスとしてかけてみたいと思います。 普段、僕がサウンドチェックに使っているレコードです。

〜「VM510CB」で視聴 Paul Bley 『FRAGMENTS』 収録曲 「Memories」〜

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SHIMIZU:この針は、上から下まできれいに音が出ていて、エントリーモデルとは思えないほどしっかり鳴っている印象です。 もう少しシンバルの残響とかバスクラリネットの低域の質感が出てくるといいのですが、欲しいところはちゃんと届いています。 ここ10年くらいは立体的な音像ばかりを求めていたので、ヘッドシェルとリード線の組み合わせを変えながらいろいろ試してきたのですが、最近になってブルーノートのような50年代や60年代のジャズを聴いてみると、全然良く鳴ってくれないんです(笑)。 こうやってベーシックなカートリッジであらためて聴いてみると、初心に戻れますね。

ECMはジャズを主としたドイツのレーベルだと思いますが、これはどのようなレコードなんでしょうか?

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SHIMIZU:ポール・ブレイ(Paul Bley)はカナダ人のピアニストで、50年代から活躍していました。 60年代に隆盛したフリージャズや70年代ニューヨークのロフトジャズ・ムーブメントにも貢献した人で、陰影と間がある独特な演奏が特徴です。 このレコードは、ピアノ、リード、ギター、ドラムのカルテットなのですが、ECMって独特のリバーブサウンドがレーベルのカラーになっているんです。 1969年に創設されたんですが、初期の作品ってそんなに音が良いという印象は持たなかったんです。 それが70年代以降から格段に良くなっていって、レーベルの音を確立していったんです。 これは1986年の作品で、まさにECMサウンドの極みですね。

参考音源(organicmusic.jp)

比較しやすいので毎回そうしているのですが、同じ音源を最上位のカートリッジで聴き比べてみましょう。

〜「VM760SLC」で視聴 Paul Bley 『FRAGMENTS』 収録曲 「Memories」〜

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SHIMIZU:ちゃんと音が全部出ていますね。 シンバルの高域の残響も残っているし、バスクラリネットの低域もしっかり出ている。 針というのは、リード線とヘッドシェルの組み合わせで自分好みの音に変えていくのが醍醐味だと思いますが、オーディオテクニカの針は日本製品らしく安定感があって安心して使えますね。 突飛な感じがしない。 僕が普段愛用しているのはアメリカ製の針ですけど、バシっとハマると最高に気持ち良い音を鳴らしてくれる反面、少しでも違う方向に行くと全然印象が変わってしまうことがあるので。 じゃじゃ馬みたいなもんですよ。 それが楽しいところでもあるんですけど。

独特の浮遊感が面白いサウンドですね。 よく見れば、参加ギタリストがビル・フリゼール(Bill Frisell)じゃないですか。 38年前……若い(笑)。

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SHIMIZU:ビル・フリゼールが参加しているECMの作品は良いものが多いですよ。 ECMの創設者のマンフレッド・アイヒャー(Manfred Eicher)は、若い頃にDeutsche Grammophon(ドイッチェ・グラモフォン)っていう有名なクラシックのレーベルでアシスタントをしていたらしくて、そこで録音の技術を学んだそうです。 その経験がECMの音作りに反映されているんだと思います。 アメリカとはまた違うドイツらしい職人気質を感じますね。
このままECMつながりで、こっちもかけてみましょうか。

〜「VM760SLC」で視聴 Azimuth 『AZIMUTH』 収録曲 「Azimuth」〜

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SHIMIZU:ピアニストのジョン・テイラー(John Taylor)、トランペッターのケニー・ウィーラー(Kenny Wheeler)、そしてボーカリストのノーマ・ウィンストン(Norma Winston)の3人編成による英国のジャズトリオで、1977年に出たアジマス(AZIMUTH)のデビューアルバムです。 正確に言うと、この作品のアーティスト名は3人の連名で、次回作からアジマスというグループ名になります。

甲高い管楽器のようなボーカルとトランペットが絡み合い、その奥に海底から響いてくるようなアルペジオシンセの旋律が浮かび上がって。 こんなにアトモスフェリックな音だったんですね。 すごくタイプのサウンドです!

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SHIMIZU:おっしゃるとおり、ボーカルはまるで楽器みたいに聞こえますね。 1977年の作品とは思えない洗練されたサウンドですよね。 こんなにボーカルが前面に出てきたのははじめてかもしれません。 トランペットの音も迫力があります。 VM760SLCはメリハリのあるしっかりとした音が鳴りますね。 次は空間的ではない音を聴いてみましょうか。

〜「VM520EB」で視聴 Esther Phillips 『PERFORMANCE』 収録曲 「I Feel The Same」〜

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SHIMIZU:これは、エスター・フィリップス(Esther Phillips)というソウルシンガーのレコードなんですけど、パキッとしたアメリカンサウンドがこの針に合いそうな気がしていたんですが、やっぱり、こういう音が得意みたいです。

〜「VM540ML」で視聴 Esther Phillips『PERFORMANCE』 収録曲 「I Feel The Same」〜

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SHIMIZU:音の鳴りが違いますね。 こっちの方がトレース能力が高いですし、ボーカルの暴れがなくなって低音がきれいに鳴っている印象です。 質感はVM520EBに近いですけど、もっと色んな音が出ているし、溝との接点が増えただけ張り詰めているというか、楽曲が持つワイルドなグルーヴ感が出てきましたね。 VM520EBは接合楕円針でVM540MLは無垢のマイクロリニア針ですよね? 針先だけでこんなに差が出るとは思わなかったです。 この500番台のカートリッジは、塊が飛んでくるような50〜60年代のジャズとかロックに合う気がします。

それでは、ここからは700番台のカートリッジで聴いていきましょう。

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SHIMIZU:700番台のカートリッジになると、明らかにハウジングの素材も変わってきますね。 素材は何でしょうか?

ダイキャストアルミニウム合金ですね。

SHIMIZU:アルミ合金ですか。 どんな音が鳴るのか楽しみです。

〜「VM740ML」で視聴 Esther Phillips『PERFORMANCE』 収録曲 「I Feel The Same」〜

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SHIMIZU:やっぱりこっちの方がいいですね(笑)。 さらに棘が取れて、安心して聴ける感じがします。 アンサンブルが整ってきたというか、僕が普段聴いている音に近いかもしれません。 暴れが全くなくなって定位感が際立ってきました。
いつもDJするときにこのレコードを持ち歩いているのですが、友人の話だと、サダー・バハー(Sadar Bahar)というシカゴのDJもスタメンに入れているらしいです。

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DJ同士、そういう情報が行き交うんですね。 針先の違いだけでもかなり音が変わることがわかりましたが、ボディが変わるとさらに傾向が変わっていく。 同じレコードでも、針やスピーカーなどの環境の違いで受け取る側の印象が大きく変わりそうですね。

SHIMIZU:変わりますね。 ヘッドシェルも700番台の上位2機種は違うモノがセットアップされていますね。 どちらもオーディオテクニカ純正のアルミ製ヘッドシェルですが、それぞれのモデルに合わせてトータルバランスが調整されていることがわかります。 僕はどちらのヘッドシェルも所有していますけど最近あまり使っていないので、また試してみたくなりました。

ちなみに、このお店ではメインのスピーカーに何を使用されていますか?

SHIMIZU:KEFというイギリスのメーカーのブックシェルフ・スピーカーです。 90年代のモデルですね。 20年以上前に中古で安く手に入れたのですが、それ以来気に入っていて、長く使っています。 聞いた話によると、KEFはこの次のモデルから本格的にサラウンド対応のホームオーディオにシフトしていったらしいので、路線変更前の最後のモデルなのかもしれません。 上にちょこっと乗っかってるのは、Fostex(フォステクス)のユニットを使った自作のツイーターです。

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SHIMIZU:もともとはそこまでオーディオに興味がなかったのですが、高円寺EAD RECORDの(組嶽)陽三さんや八王子SHeLTeRの(野嶌)義男さんら先輩方からいろいろ学ばせてもらって、音に対する姿勢が少しずつ身についていきました。 ハイファイ・オーディオの文化をかじらせてもらいながらも、自分が納得できるものだけを取り入れていくことが大事というか。 セオリーはあるにしても、自分にとって気持ち良い音でなければ意味がないですし、自分が満足できればそれでいい気がするんです。 なかなか満足はできないですけど(笑)。

ハイファイ文化に浸った先輩オーディオポリスがホイッスルを吹いてくるかもしれませんが(笑)、みんなが気持ちが良いと思う音を囲める空間があることが大事ですよね。

SHIMIZU:自分の楽しみ方を見つけることですよね。 適度な曖昧さも必要なのかなとも思っています。 セオリーからすると邪道なんですけど、やってみなきゃ分からないですから。 トライアンドエラーの繰り返しです。 遠回りかも知れませんが、それが楽しいんです。 ここは店舗なので、複数のお客さんに気持ち良い音を共有してもらいたいということもあって、どうやったらリスニングポイントを広げられるか、試行錯誤を続けています。 コンクリートだらけなので最初は音がキンキン反響していたんですが、ここ2年くらいかけて木を取り付けながら徐々に環境を整えています。

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SHIMIZU:次は、オーケストラサウンドを聴いてみましょうか。

〜「VM740ML」で視聴 武満徹 『燃える秋(GLOWING AUTUMN)』 収録曲 「出会いと亜希のテーマ」〜

これって、日本映画のサントラですよね?

SHIMIZU:はい。 日本の現代音楽にハマってから武満徹さんがすごく好きになって、いろいろと聴きまくったんですが、これはそのなかでも大好きな作品です。 五木寛之の小説を映画化していて、そのサントラなのですが、肝心な映画の方はまだ観ていなくて。 世界広しと言えども、武満徹コーナーがあるのはここだけかもしれません(笑)。

真っ赤な夕日が空を染めている情景が浮かぶサウンドですね。

SHIMIZU:ロマンティックですよね。 十分よく鳴っていると思います。 クラシックやオーケストラを聴くにはこのシリーズがいいかもしれないです。 素晴らしい。

このレコード、三越がフィーチャーしてるんですね。 企業に力があれば文化をバックアップできる。 なんだか時代を感じてしまいます。

SHIMIZU:三越と東宝が共同制作した映画です。 高度経済成長期が終わってバブルへと向かう狭間の時代ですね。

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では、ここでもう一度最上位の針で聴いてみましょう。

〜「VM760SLC」で視聴 武満徹 『燃える秋(GLOWING AUTUMN)』 収録曲 「出会いと亜希のテーマ」〜

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SHIMIZU:さっきよりもさらに上品になりましたね。 ストリングスの伸びはこっちの針の方がきれいだし、バスの鳴りもまろやか。 指揮者がベテランになったような感じです。 スピーカーの存在を忘れるくらい素晴らしい音が鳴ってますね。 感動してしまいました。
こうやって聴き比べると、500シリーズと700シリーズの世界観の違いがわかる気がします。

〜「VM760SLC」で視聴 Marion Brown 『VISTA』 収録曲 「Visions」〜

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SHIMIZU:マリオン・ブラウン(Marion Brown)はアメリカのサクソフォニストで、60年代からフリージャズの名作をたくさん残している人なんですけど、この作品だけ毛色が違うんですよね。 叙情的でグルーヴィ。 スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)のカバー曲も収録されているんですけど、ヴォーカルに迎えたアレン・マーフィー(Allen Murphy)の歌声のなかに潜んでいる微細な擦れが感じられないことが多いんです。 この針は予想以上に良いですね。 ちゃんと擦れが聴こえてきます。

本当ですね。 張りのあるボーカルにわずかな擦れがあるのがわかります。

「VM750SH」が引き出す、クアドラフォニックのポテンシャル

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SHIMIZU:このレコードはクアドラフォニックっていう4チャンネル録音の技術を使って作られているんですけど、このVM750SHに採用されているシバタ針は、もともと4チャンネル再生用に開発されたものですよね。 今、4チャンネルのオーディオシステムを持っている人ってそうはいないと思います。 僕も聴いたことがないので、どんな感じで鳴るのかとても楽しみにしていたんです。

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では、VM750SHで聴いていきましょうか。

〜「VM750SH」で視聴 Marion Brown 『VISTA』 収録曲 「Visions」〜

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SHIMIZU:このレコードはABC Impulse!(ABC インパルス!)から出ていて、マトリックス方式のクアドラフォニックだと思いますが、シバタ針が音をくまなく拾っているためか、気持ち良いですね。 より立体的に聞こえますし、今まで聞こえてこなかった音も出てきているような気がします。

4チャンネルのレコードって、今の人にはあまり馴染みがないと思いますが、代表的なものとかあるのでしょうか?

SHIMIZU:当時はいろいろと出ていたと思いますよ。 中古レコード屋で今もよく見かけますし。 それこそ大物のロックやジャズ、クラシック、日本の歌謡曲も少しあるみたいですが、70年代末に終わってしまいました。

なぜ普及しなかったんでしょうね?

SHIMIZU:詳しくは分かりませんが、SQとかCD-4とか、レコード会社ごとに採用している規格が違っていたり、特別な再生機器が必要なことなどが原因のようです。 このレコードみたいに、マトリックス方式のクアドラフォニックは普通の2チャンネル・ステレオでも再生できるので、通常のスレテオ盤も存在するレコードがあれば、聴き比べてみても面白いかもしれませんね。

次は何をかけていきましょうか?

SHIMIZU:日本のロックで異色のレコードがありまして。

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〜「VM760SLC」で視聴 浅川マキ『幻の男たち』 収録曲 「夢なら」〜

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SHIMIZU:浅川マキのアルバムはここ2〜3年で結構いろいろと再発されたんですが、これはまだされていませんね。 本多俊之というジャズのサクソフォニストがプロデュースしているんですが、かなり斬新な音作りです。 この作品以前の浅川マキのイメージからすると、当時のファンには受け入れられなかったかもしれませんね。 ハウスみたいな音源も入っていて、オーバーダブしたボーカルがラップのように差し込まれていて面白いんです。 このレコード、高円寺でUPTOWN RECORDSという店をやっているアメリカ人の友達に教えてもらったんです(笑)。 1983年に浅川マキがこんなニューウェーヴをやっていたとは、うかつにも知りませんでしたよ。

当時の日本人がこんなことやっていたなんて、驚きでした。

SHIMIZU:音の粒立ちが良く、幻想的な雰囲気と浮遊感が際立っていて、凄く気持ち良いですね。 浅川マキが目の前で歌っているみたいです。 VM760SLCはラインコンタクト針ですよね?カッティングマシンでラッカー盤に音溝を刻む時に使うカッターヘッドとほぼ同じ形状だと思いますけど、トレース能力が抜群ですね。 VM750SHのシバタ針もそうでしたが。

こっちにあるレコードは何ですか?

SHIMIZU:80年代にドイツのテルデック(Teldec)社とノイマン(Numann)社が開発したDMM(Direct Metal Mastering)という技術で作られたレコードです。 通常は音溝をカットしたラッカー盤からいくつかの工程を経てスタンパーが出来上がるんですが、DMMは銅板に超音波を当てて直接カットしたマザー・プレートからスタンパーを作るので、音質が安定すると言われています。 僕も自分のレーベル(17853 Records)からリリースしたいくつかの作品でDMMを採用しました。

80年代といえば、デジタル時代の幕開けでもありますね。

SHIMIZU:はい。 70年代にデジタル技術が開発されて、80年代には本格的に制作現場に導入されていきました。 現代はプリ・プロダクションからパッケージまで、すべてがデジタルですよね。 アナログレコードに関して言えば、デジタルで完結したものをアナログに戻していることに疑問を持ってしまうところもありますが、逆に、今の時代でしかできないこともきっとあるはずです。

〜「VM760SLC」で視聴 Lauren Newton『voiceprint』収録曲「… Or Do You? / Dangerous」〜

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参考音源(LISTEN1 / LISTEN2)

SHIMIZU:ローレン・ニュートン(Lauren Newton)は、奇天烈なアヴァンジャズ作品をたくさん発表してきたオーストリアのグループ、ヴィエナ・アート・オーケストラ(Vienna Art Orchestra)やフレデリック・ラボルド・クルー(Frederic Rabold Crew)などで活躍したシンガーで、驚異的なボイスインプロビゼーションで知られていますね。 1983年に富樫雅彦との共演作品も日本で録音しています。 これは両グループにも参加しているウリ・シェラー(Uli Scherer)とトーマス・ホルストマン(Thomas Horstmann)と一緒に行ったライブの音源ですね。 80年代らしいエッジのあるクリアーなサウンドです。 このVM760SLCだと僕の好きな空間的な音が見事に表現されていますね。

今日の総括として感想をお聞きしたいのですが、針J体験はいかがでしたか?

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SHIMIZU:VM500シリーズとVM700シリーズでそれぞれキャラクターがあることがわかりました。 50〜60年代のジャズやのロックには500番台の針が合いそうだし、空間系の音楽と相性がいいVM760SLCの完成度の高さには驚かされました。 でも、今日いちばん驚いたのは、シバタ針のVM750SHで体感したクアドラフォニックの立体的な音。 これまでに何度も聴いたレコードですが、まだ聞こえていなかった音が刻まれていたとは。 それが分かって嬉しかったですね。 次回は4チャンネルのアナログレコードを聴く会をやってみたいです。

こうして針Jしながら各年代のレコードをじっくり聴いていると、アナログレコードを取り巻く環境や技術の変化がそれぞれの時代にあって、それが音にも表れているのがわかりますね。

SHIMIZU:現代音楽に傾倒してから気づいたんですが、60年代のアナログレコードって本当に驚くほど音の良いものがあるんですよ。 70年代にはクアドラフォニックのような録音技術、80年代にはデジタル技術も出て来て、また違う良さがある。 各年代には特有の味があって、レコードにはそれぞれの時代の軌跡が刻まれているんだと思います。 きっと、同じものはもう作れないかもしれません。 自分が年をとってから、ようやく楽しめるようになった音楽や音があることにも気づきました。 それがアナログレコードの魅力なんだと思います。 まだまだ終わりがまったく見えてこないですね。

CHEE SHIMIZU

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1971年、東京生まれ。 1993年より本格的にDJ活動をスタートし、2004年よりDJプロジェクト「DISCOSSESSION」を始動。 2000年代後半からはリスニング・スタイルを主軸にDJ活動を展開するほか、選曲家、ライター、プロデューサー、複数のレコード・レーベル主宰と様々な顔をもつ。 2008年よりオンライン・レコードショップ「ORGANIC MUSIC」をローンチし、独自のネットワークと嗅覚でオブスキュア(=曖昧)なサウンドを発掘し続け、2019年には下井草に実店舗「PHYSICAL STORE / ORGANIC MUSIC + PLANET BABY」をオープン。 今日も興味の赴くままに音楽と向き合い、越境し続けている。

PHYSICAL STORE

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〒167-0022 東京都杉並区下井草4-32-17 第一陵雲閣 107
050-1428-8756
info@organicmusic.jp
OPEN:15:00~21:00(定休日:水木)

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Photos:Shintaro Yoshimatsu
Words & Edit:Jun Kuramoto(WATARIGARASU)

今回登場したカートリッジ