オーディオテクニカのパワード・ブックシェルフスピーカー『AT-SP3X』は、3インチウーファーと1.1インチツイーターを組み合わせた2ウェイ構成で、Bluetooth接続にも対応したモデルです。PCまわりからちょっとしたリスニング環境まで幅広く使えるモデルです。
今回、オーディオライターの炭山アキラさんがAT-SP3Xをリスニングルームにセットし、ストリーミング音源を試聴。ピュアオーディオと同じようにセッティングしたうえで、その実力がどのように発揮されたのかをレビューします。
※写真はすべてイメージで、炭山さんが試した状態を再現したものではありません。
AT-SP3Xを使ったストリーミング再生の音質チェック
AT-SP3Xは、オーディオテクニカのオフィシャルECサイトで税込み3万円弱という、とてもお手頃な価格で購入できる製品です。パソコンの両脇に置くスピーカーとしては少々大ぶりな感じでもありますが、おそらく主用途はそこではないかと推測しています。
今回はそれを敢えてオーソドックスなピュアオーディオ的方法論で部屋にセットして、音を聴いています。こんな使い方だから、わがリファレンスのプリアンプから有線で音楽信号を入力してもよかったのですが、AT-SP3XはBluetooth入力が可能で、多分これが最もユーザーがよく用いる入力方法であろうと考え、私も愛用のChromebookからBluetoothを経由し、Qobuzのストリーミング音源を送り込んで音を聴くことにしました。
AT-SP3XのBluetoothは現在最も一般的なSBCコーデックで、Qobuzをつないでももちろんハイレゾにはなりませんが、それでも想像を遥かに超える音楽の再現を聴かせてくれています。8cm口径に満たない小型ウーファーを2リットル程度のキャビネットへマウントした構成ですから、さすがに低域方向は早めに限界が訪れますが、それでもシティポップやAORなどでは、軽やかでよく弾む低域を聴かせて感心します。
ボーカル帯域は、むしろこのクラスのスピーカーとしては驚くべき自然さ、ディテール表現の豊かさを聴かせます。歌はもちろんのこと、YouTubeのライブ配信などでも、時折ハッとさせるような声の生々しさ、ライブの臨場感を味わうことができます。
ストリーミング時代に寄り添う、使いやすさと再生力のバランス
AT-SP3Xは、インシュレーター/スパイクの種類を変えても音の違いがはっきりと分かるだけの、器の大きさを持ったスピーカーです。オーディオビギナーが、イヤホンの代わりに初めて使うスピーカーとしても薦められますし、しっかりしたオーディオに取り組まれている人も、PC脇やベッドサイドでの気軽なサブシステムとして、選択肢になるのではないですか。
また、そういうお手軽システムを組むとすると、一昔前までなら小さなものでもCDプレーヤーとアンプ、スピーカーを組み合わせる必要がありました。一方、Bluetooth対応のパワードスピーカーは、スマホからストリーミング音源を流してやればそれでシステムが完結しますから、いい時代になりましたね。
オーディオテクニカのスピーカーというと、あまりなじみのない人が多いかもしれませんが、同社は音溝の振動を音楽信号に変換するカートリッジにかけては世界有数のメーカーです。音楽信号を振動=音波に変換するスピーカーにいい作品が出るのも、ある意味では当然といってよいでしょう。コストパフォーマンスの高さまで含め、広く薦められる製品だと感じています。
Words:Akira Sumiyama
