1980年代に登場し、独特の細長い形状と携帯性で話題を集めたポータブルレコードプレーヤー「サウンドバーガー」。そのユニークなスタイルは時代を超えて愛され、2022年の復刻モデル、そして現行の『AT-SB727』へと受け継がれています。

今回は初代モデルの背景から最新仕様までを振り返りつつ、サウンドバーガーがなぜ “いま” あらためて注目を集めているのかを、オーディオライターの炭山アキラさんが解説します。

レコードを持ち歩く楽しさを拓いた、初代サウンドバーガー

「レコードジャケットよりもずっと小さなレコードプレーヤーが登場したぞ!」と、オーディオマニアを驚かせた元祖サウンドバーガー『AT727』は、1982年に発売されました。奇しくも、コンパクトディスク誕生と同じ年です。

それまでも、バン型のミニカーがレコードの盤面へ沿って動き、音楽を奏でるといったユニークな再生装置は存在していましたが、当時はあくまで楽しさや話題性を重視したもので、真っ当に音楽を聴く用途とは異なる位置付けのものでした。ところが、サウンドバーガーはその片手でひょいと持てる小型・軽量のボディから、朗々と音楽を奏でてくれました。私も初めて聴いた時には、事前の想像をケタ外れに上回る再生音に、しばし唖然としたものです。

元祖サウンドバーガーは、1979年に「ウォークマン」が切り拓いたアウトドアで音楽を楽しむ文化を、レコードでやってのけてしまった! と、オーディオマニアはもちろん非マニア層からも大きな注目を浴びました。単2型乾電池3本で動き、LINE出力の他にヘッドホン出力が装備されていましたから、その気になれば本当に旅先やピクニック場などでレコードが楽しめたのです。

当時のAT727の広告
当時のAT727の広告

その画期的なコンセプトとデザインで、サウンドバーガーは結構なベストセラーになったと記憶しています。しかし、1985年にはCDが爆発的なブレイクを遂げ、アナログレコードの世界は先細りになっていきます。サウンドバーガーも、いつしか店頭で見かけなくなったな、という印象でした。

40年ぶりの復活と、サウンドバーガーの新たな広がり

時は流れてそれから40年、オーディオテクニカの創業60周年を記念して、サウンドバーガーは華麗なる復活を遂げます。外観は往年の製品と見分けがつかないくらいそっくりですが、乾電池の代わりにUSB充電、ヘッドホン出力の代わりにBluetoothと、内容がアップデートされての再登場でした。2022年のことです。

復活サウンドバーガー『AT-SB2022』が数量限定で発売された時の、熱狂ともいうべき市場の反応は、今でも記憶に新しいところです。オンライン限定販売でしたが、瞬く間に購入ボタンが押せなくなり、複数回に分けて再販売されますが、それでも事態は全く変わらず、オーディオマニアの間で「また買えなかったよ」という溜め息が漏れていたものです。

そんな復活サウンドバーガーがレギュラー商品になったのは、翌2023年の6月でした。初代から数字を引き継いだ、『AT-SB727』としての再登場です。サウンドバーガーの特設サイトに表示される紹介文が振るっています。「時は20XX年、 “聴かれるもの” ではなく “飾られるもの” となってしまったレコードを救うため、1980年代からやってきた救世主、サウンドバーガー!」といった内容です。

私にも、「推しがレコードを出したから全種類買ったけど、プレーヤーはないんだよね」なんて知人がいますし、そういう人は意外と多いんじゃないかと思います。そんな非オーディオマニア層にとって、片手で軽く引っ張り出してワイヤレスイヤホンでレコードが楽しめ、聴き終わったら簡単に仕舞い込める、サウンドバーガーほどライフスタイルにマッチしたプレーヤーもないでしょうね。

簡単操作で、すぐにレコードを楽しめる

サウンドバーガーの操作法を書き記しておきます。まず上蓋をパカッと斜め上へ持ち上げると、ゴム製のスタビライザー(レコード上の中心部へ載せてレコードを安定させるもの)兼用45RPMアダプターに支えられたトーンアームが見えますから、アームを向かって右側へ “カチッ” というところまで引き出します。スタビライザーもホルダー部から外し、レコードを載せたら、スタビライザーをスピンドルへ突っ込む形で設置し、レコードを安定させます。

それで準備完了、電源をONにして33/45回転を選ぶのは、どちらもボタン1つです。トーンアームの指かけへ手を添え、アームをレコードの最外周へ寄せていくと、自動的にレコードは回り始め、針を落とすと音楽再生が始まります。曲が終わったらアームを元の位置へ戻してやると、回転は自動的に停止します。

Bluetooth以外にも、ステレオミニジャックからLINE出力が出せますから、お部屋の据え置きオーディオにつなぐことが可能です。

小型ながら高音質。その理由を探る

復活サウンドバーガーとは何度も付き合っていますが、いつも驚かされるのは、その音質です。こんなに華奢で簡素な作りのプレーヤーから、音色が澄んで音の通りが良く、意外な大スケールの音楽が飛び出してくるのですから、「目を疑う」とはこのことか、という感じです。

サウンドバーガーの高音質には、ちゃんと理由があるのです。サウンドバーガーは何といってもポータブルですから、電源は充電式で家庭用のコンセントへつながずに音楽を奏でることができるのですね。

オンラインストア限定のホワイトカラーモデル「AT-SB727 WH」
オンラインストア限定のホワイトカラーモデル「AT-SB727 WH

家庭用のいわゆる商用電源AC100Vは、近隣の工場や家庭内のコンピューター、そしてLED照明などから高周波のノイズが付加されて、非常に汚れていることが多いものです。それはオーディオ機器の再生音をてきめんに汚し、何となくザラザラと濁った再生音となってしまう傾向があります。

もちろん、一般的なレコードプレーヤーはAC100Vからの電源を利用しつつ、内部の電源回路やアダプターでノイズを抑える対策が施されています。一方、自宅で活用しているオーディオテクニカのAT-LP8Xプレーヤーなども、家庭用のAC100Vで動いていますが、わが家は大きな工場が近いためかとりわけ電源のノイズが大きく、引っ越した当初の頃はとても音楽を楽しめる環境ではありませんでした。それで何とかしなきゃといろいろ試した結果、高周波を遮断するフィルターを電源周りへ入れてやることにより、ようやく音楽を耳に障らない音質で、はつらつと楽しむことができるようになりました。

ところがサウンドバーガーは充電池駆動ですから、商用電源のノイズと無縁です。これによる音質的なアドバンテージは、全く計り知れないものがあります。

また、普通のプレーヤーと違うのは、並外れて小さな筐体の中で引き回される配線は必然的に短く、またフォノイコライザーをはじめとする回路も、小さくシンプルで信号経路が短くなりがちで、ノイズの影響を受けにくかったり、シグナルパスが短いことで音の鮮度が上がるといった傾向があります。振動対策や構造面などで不利とされることが多い小型コンポーネントが、しばしば「おやっ?」という高音質を聴かせることがあるのは、こういう要因が大きいのではないかと推測しています。

サウンドバーガーの交換針は、『AT-LP60X』などとも共通の『ATN3600LC』というもので、カンチレバーの先端には接合の丸針が装着されています。最近になって、接合楕円針が装着された『ATN3600LE』という交換針が発売され、針先を取り替えることで、簡単に音質のグレードアップを図ることができるようになったのが嬉しいですね。

どこでも楽しめる、サウンドバーガーならではの遊び心

元祖サウンドバーガーが発売されてすぐの頃、実験派オーディオ評論の大家・江川三郎さんがサウンドバーガーに惚れ込み、ヘッドホンアウトからパワーアンプへ直結することで、並みの本格プレーヤーが逃げ出すような音を奏でることができる、と激賞なさっていました。

さらに江川さんは、自家用車に自作の平面バッフルスピーカーを積み込んでピクニック場へ向かい、そこでハッチバックのゲートを開けてスピーカーを外へ向け、サウンドバーガーからバッテリー駆動のカーオーディオ用パワーアンプへ信号を送り込んで、「焚き火をしながら高品位アナログオーディオ」という、これまで誰も成し得なかったスタイルを確立されました。

私もそれに倣い、Bluetooth内蔵のデジタルアンプと自作スピーカーを車に乗せて、同じようにピクニック場でレコードを聴いてみたいな、などと考えているところです。音楽仲間やオーディオ仲間でワイワイと、楽しい会になりそうじゃないですか。

レコードプレーヤー「サウンドバーガー」

AT-SB727

AT-SB727 レコードプレーヤー「サウンドバーガー」

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Words:Akira Sumiyama

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