今年開催される音楽/アートフェスティバルのなかでも、特に注目を集めているのが2026年6月26日〜28日に開催される「NU Festival」である。

TAKANAWA GATEWAY CITYの各施設やエリアを活用して開催されるこのイベントは、バルセロナ発祥のフェスティバル「Sónar」とのコラボレーションというかたちで開催される。かつて日本のトラックメイカーたちに新しい地平を示した「Sónar Tokyo」が最後に開催されたのが13年前。

音楽とテクノロジー、都市空間を横断してきた「Sónar」のスピリットは、空白期間を経て現代にどう蘇るのか。「NU Festival」について、その見どころをわかりやすく紹介していこう。

なお、フェスティバルのコンテンツの1つとして展開する「OTOJU Sessions」は、Always Listeningが開発に加わったサウンドシステム『OTOJU』の機能をフル活用した内容になるので、そちらもぜひ注目してほしい。

Sónarが帰ってくる!

「Sónar」はバルセロナで1994年にスタートし、日本版の「SonarSound Tokyo」は2002年に初開催。以降2013年まで断続的に開催されてきた。

2000年代と2010年代にテクノやエレクトロニカといった音楽を聴き漁っていたような人たちにとって「Sónar」は刺激的な存在だった。そして、トラックメイカーたちにとっては、自分たちの音楽がクラブの現場だけでなく、世界の最新の電子音楽/メディアアートの文脈に接続されることを確認できる場だった。

「SonarSound Tokyo」が最後に開催されてからの空白期間。その13年間に音楽シーンで起きたこと――ネットレーベルが興隆し、MP3の普及でDJスタイルはレコード/CDからPCへ。作品発表の場としてMySpaceやSoundCloudのようなオンラインプラットフォームが登場し、情報流通や批評の主戦場は雑誌からウェブメディアやブログへ一気に移行した。そうしたデジタル化の黎明期ののち、Sónarは「NU Festival 2026」とのコラボレーションというかたちで帰ってきた。

Sónar不在の間に、あらゆるコミュニケーションはメタデータの共有に置き換わり、生成AIにまつわる話題は、恩恵と脅威のバランスを精査する暇なく日々更新されていく。テクノロジーと私たちの関係性について、かつてとの差分を体感できる機会になる。と言ったら大袈裟だろうか。とにかく、世の中が複雑化するならフェスティバルもそれに呼応したものがあってもいいはずで、「NU Festival 2026」のインフォは情報量過多で全体像が掴みにくい。でも、だからこそ読み解く価値がある。ここではあえて分かりやすく、その5つの見どころを紹介していこう。

1. 高輪ゲートウェイ駅前一帯をフル活用

「NU Festival 2026」の舞台となるのは、駅と街が一体となって開発されたTAKANAWA GATEWAY CITY。JR東日本が「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置づけるこの新しい都市空間を、音楽/アート/テクノロジーが交差する場へと変えていく。

主なエリアは以下の4つ。ホール、駅、広場。通常なら別々の機能を持つ場所が、ひとつのフェスティバルとして連携し、都市の使い方そのものを問い直す。

NU Live

ステージをセンターに設置し、高品質なサウンドシステムと緻密に設計されたライティングで音への没入を演出するメインステージ。

NU Art

今年オープンした文化拠点のMoN Takanawaの「Box300」ではSónar+D*の、「Tatami」ではSuperDeluxe**の文脈を引き込んだ音楽・アート・テクノロジーの最前線を体感するプログラムが展開される実験空間。

*Sónar+D:Sónarのカンファレンス的な機能を担うイベント
**SuperDeluxe:かつて六本木にあったオルタナティブスペース。エクペリメンタルミュージックの聖地として知られ、現在は千葉県の鴨川に拠点を移した

MoN Takanawa Tatami

NU Station

高輪ゲートウェイ駅 南改札外3Fテラスで展開されるJ-WAVEとのエキナカDJプログラム。駅舎空間を舞台に、真下を電車が走り抜けるロケーションのなかでDJたちがプレイする。

NU Park

駅前のGateway Parkが開かれた音楽の場に。12フィートコンテナを改造したモビリティステージを舞台に、SHINICHI OSAWAら国内外で活躍するDJたちが出演する。

2. NU Live × Sónar Sound:電子音楽の現在地を横断的に見渡す

音楽のラインナップは、現在の広範なエレクトロニックミュージックの輪郭を鋭く切り取りつつ、かつてのSónar常連でいまなお最前線にいるアーティストたちも揃う。

まず注目すべきはアクトレス(Actress)だろう。2010年前半の時点で、これはテクノかアンビエントかという混乱を伴う新しい質感を聴き手に覚えさせた彼の作品は、今なお進化を続けている。例えば、2018年には自身の過去作品を学習させたAIアバターを架空のアーティスト人格としたヤング・ペイント(Young Paint)という先進的なプロジェクトにも取り組んでいた。

Actress

さらに、6月28日にはアクトレスとスザンヌ・チアー二(Suzanne Ciani)による「Concrète Waves」が本邦初公開される。Buchlaシンセサイザーで自然や海のうねりを描き出してきたチアー二と、都市や工業地帯のフィールドレコーディングを再構築するアクトレス。両者のコラボレーションは、電子音楽における “自然” と “人工” の対立を、4チャンネル音響の空間性の中で溶かしていく試みと言える。

Actress & Suzanne Ciani

中国・広州のコーラ・レン(COLA REN)は、ジャズ、アンビエント、ダブを複雑なリズム感覚の中に溶け込ませるプロデューサー/DJ。ローカルなクラブシーンの熱と、アジア圏の新しい抽象感覚を同時に運び込む存在だ。

Cola Ren

日本のクラバーからも熱狂的指示を得ているトゥ・シェル(Two Shell)は、新曲『Smile』のヒットの熱も冷めやまないなかでのライブセットに期待が集まる。国内勢では、コロナ禍以降のレイヴサウンドの象徴とも言える存在としてグローバルな人気も獲得したみんなのきもちが、レアな「Downtempo Set」を披露する。

そして、ニューヨークの前衛音楽シーンで30年近くにわたって活躍し、アンビエントミュージックの傑作『THE DISINTEGRATION LOOPS』で知られるウィリアム・バシンスキ(William Basinski)は、グランドピアノを用いた「Passing the cup of sorrows」を世界初披露する。

William Basinski

現在発表されているNU Live × Sónar Soundのラインナップはこちら

◾️ NU Live × Sónar Sound◾️

6月27日(土)
Actress [DJ]
COLA RENDJ KRUSHGrandbrothers [LIVE]
冥丁 / MEITEI [LIVE]
Nathan Fake [LIVE]
Sapphire Slows

6月28日(日)
Actress & Suzanne Ciani present Concrète Waves [LIVE]
DAITO MANABE [LIVE]
鏡民 / Kyomiみんなのきもち / Minna-no-Kimochi (Downtempo Set)Sakura Tsuruta [LIVE]
Two ShellWilliam Basinski “Passing the cup of sorrows” [LIVE]
100LDK [VJ]
comboy [VJ]

3. NU Art × Sónar+D:AIの時代にあっても人の創造性が固有の意味を持ち続けること

MoN TakanawaのBox 300では、アートプラグラム「NU Art」の一環として、Sónar+Dとのコラボレーションのもと、アーティスト/AI研究者の徳井直生がキュレーターを務める企画「Beyond / Alternative GenAI」が展開される。このプログラムの中心にあるのは、AIをめぐる現在進行形の問いだ。

徳井は、生成AIの急速な進歩によって誰もが音楽や映像を生成できるようになった現在を認めつつ、その裏側で「AIを使った自動化が人の主体性を静かに侵食していくこと」への危機感がキュレーションのコンセプトにあると、本記事のためのインタビューで語ってくれた。

徳井直生

「AIは、既存のスタイルの平均へと作品を引き寄せる「重力」のように働きます。便利な反面、個人の判断や、偶然の逸脱——本当はそこから新しい表現が生まれるはずの余白——を、知らないうちに飲み込んでいく。加えて、環境負荷、学習データの権利、仕事への影響といった負の側面もはっきりしてきました。

このテーマに『Beyond(その先へ)』と『Alternative(別のやり方)』を掲げたのは、メディアが喧伝するAI像とは違う像を提示したかったからです。AIの影の部分に光を当てる実践、AIを意図的に「誤用」する創造、支配的なパラダイムの外側にある生成技術——そして何より、生成AIのその先でも、人の創造性が固有の意味を持ち続けることを祝福したい、そう考えました」

展示では、永井歩と牧野豊の作品が、通常は避けるべきものとされるAIモデルのハルシネーションを逆手に取り、人とAIの知覚・認知の差異に光を当てる。スプツニ子!、Dentsu Lab Tokyo、Qosmoの作品は、学習の環境負荷や学習データの権利といった生成AIの影の部分に踏み込む。つまりここで提示されるのは、 “AIで何が作れるか” ではなく、 “AIによって私たちの創造性や倫理、知覚がどう変質するのか” という問いである。

永井歩
牧野豊

徳井は「AIという大きなトピックに対して、定まった『答え』を提示するのは不可能だと思う」としながらも「それでも、今回の展示やパフォーマンスを体験していただいて、まさに現在の生成AIの先にあるオルタナティブなAIの可能性を感じていただけると嬉しい」とも語ってくれた。

現在発表されているNU Art × Sónar+Dのラインナップはこちら

◾️NU Art × Sónar+D◾️

6月26日(金)27日(土)28日(日)
Alexis André (Sony Computer Science Laboratories – Paris) × KKAA
永井歩/Ayumi Nagai
Dentsu Lab Tokyo x Qosmo
Neutone / Roland
Neutune x MixAudio
スプツニ子!/Sputniko!
Yutaka Makino

6月27日(土)
Portrait XO [LIVE]
永井歩/Ayumi Nagai [ARTIST TALK]
Neutone [ARTIST TALK]
Albert.DATA & Portrait XO [CONVERSATION]

6月28日(日)
Albert.DATA [LIVE]
Neutune x MixAudio [ARTIST TALK]
Nao Tokui x Andrea Faroppa (Director of Sónar+D) [CONVERSATION]

4. OTOJU Sessions:“聴くこと”を取り戻すための空間

近年、世界各地でリスニングイベントへの関心が高まっている。クラブのように踊るのでも、コンサートホールのように正面を向いて聴くのでもなく、音の中に身を置き、身体ごと沈み込むように聴く。ロンドン、LA、ベルリン、東京で広がるリスニングバーやディープリスニングの潮流は、ストリーミング以降に細切れになった音楽体験への、ひとつの反動でもある。

NU Festival内でdublab.jpがプロデュースする「OTOJU Sessions」は、その流れをフェスティバルの中に持ち込む試みだ。OTOJUは、Always Listening、サウンドデザイン領域のWHITELIGHT、dublab.jpのディレクター陣が共同開発したサウンドシステム。無指向型の4チャンネルスピーカーが、偏りなく音で空間を満たす。

会場にはOshima Prosによる高品質なカーペットが敷き詰められ、来場者は寝そべりながらサラウンド音響に身を委ねる。フェスにおいてしばしば過剰になりがちな刺激の中で、OTOJU Sessionsはむしろ感覚を静め、音に深く集中するための “避難所” であり、 “実験室” になるだろう。

OTOJU

5.『六大』からSound Bathへ、音の深層に潜る2日間のプログラム

OTOJU Sessionsのプログラムは、2日間で異なる聴取体験を用意している。6月27日のDAY1は「Gravity & Grain」。Keigo TatsumiとShökaによるライブパフォーマンスに加え、Akie、Chloé Juliette、DJ Emerald、原雅明が選曲を担当する。「サウンドに深く沈む、サウンドの粒子を全神経で感じる」というテーマが示す通り、ここでの主役は曲単位のわかりやすさではなく、音の質感、重力、肌理のような要素かもしれない。

Keigo Tatsumi

6月28日のDAY2は「Rokudai: Beyond」。中心となるのは、日本を代表するジャズピアニスト、故・菊地雅章が遺した唯一無二のエレクトロニックミュージック『六大=地水火風空識』の特別リスニングセッションだ。リイシューのために奔走した原雅明によるトークも行われる。さらにShhhhhとNick Luscombeが『六大』からインスパイアされた選曲で、その世界を拡張していく。

◾️ NU Live × dublab.jp presents OTOJU SESSIONS◾️

6月27日(土)
AkieChloé JulietteDJ EmeraldKeigo Tatsumi [LIVE]
Masaaki HaraShöka [LIVE]

6月28日(日)
Nick LuscombeRokudai Special Listening /w Masaaki HaraShhhhh

◾️ NU Live × Sound Bath◾️
6月27日(土)28日(日)
HIKO・KONAMI × Ousmane Bâ

六大=地水火風空識

加えて、両日で行われるHIKO KONAMIによるSound Bathでは、音の振動と共鳴を通して身体と意識をチューニングする体験が展開され、そこに現代アーティスト、ウスマン・バ(Ousmane Bâ)のビジュアルも重なる。OTOJU Sessionsは、NU Festivalの中でもっとも静かで、しかしもっとも深く身体に残るプログラムになるはずだ。

HIKO KONAMI

「NU Festival 2026」のチケットは現在1DAYと2DAYともに販売中。新しい音楽体験に興味のある人は、ぜひ参加してみてほしい。

NU Festival 2026

日 時:
2026年6月26日(金)12:00-22:30
2026年6月27日(土)12:00-23:00
2026年6月28日(日)12:00-23:00

※各プログラムごとに実施時間は異なります。

会場:
<NU Live> TAKANAWA GATEWAY Convention Center LINKPILLAR Hall
<NU Art> MoN Takanawa: The Museum of Narratives (Box300 / Tatami)
<NU Station> 高輪ゲートウェイ駅 南改札外3Fテラス
<NU Park> 高輪ゲートウェイ駅前Gateway Park

HP

チケット販売中

Words & Edit:Kunihiro Miki

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