イヤホンの音は、なぜここまで違って聴こえるのでしょうか。その理由のひとつが「発音方式」、つまりドライバー構造の違いにあります。ダイナミック型、バランスド・アーマチュア型(BA型)、ハイブリッド型、そして静電型。それぞれに動作原理が異なり、音の傾向や特性も大きく変わります。
今回は、オーディオライターの炭山アキラさんが、イヤホンの発音方式の違いを構造からわかりやすく解説します。仕組みを知ることで、イヤホン選びはもっと面白くなるはずです。
最も広く採用されているダイナミック型
イヤホンには、いろいろな発音方式があります。どれも同じイヤホンジャックへケーブルの先端プラグを挿せば、あるいはBluetoothでペアリングすれば音が出るのだから、どれも大差ないんじゃないのと思われているかもしれませんが、思った以上に大きな違いがあるものなのです。
世の中に普及しているイヤホンの中で、圧倒的多数が発音方式に採用しているのは、〈ダイナミック型〉です。というか、スピーカーでもヘッドホンでも電気信号を空気の振動に変換する、いわゆるトランスデューサーにはダイナミック型が圧倒的主流として用いられています。
ダイナミック型の発音方式は、「電気が通る導体に磁気をかけると力が発生する」という「フレミングの左手の法則」の原理で動いています。具体的には、振動板に取り付けられたボイスコイルに音楽信号を流し、磁石と鉄や強磁性体の合金などで構成された「磁気回路」と呼ばれる装置の中へ挿入することにより、ボイスコイルが振動してそれが振動板を動かし、音楽を再生するという仕組みです。

ATH-CKD7NC
ノイズキャンセリングUSB Type-C用イヤホン
繊細な表現を得意とするバランスド・アーマチュア型
ダイナミック型と同じ「フレミングの左手の法則」を発音原理に用いながら、非常に独特の発音方式を持つ形式があります。〈バランスド・アーマチュア型(以下BA型)〉です。
BA型は、2つの磁気回路とボイスコイルを持ち、それらは静止していますが、その中間に差し込まれたU字型の磁性体(アーマチュア)が、ボイスコイルの音楽信号に応じて振動し、それと極小のロッドでつながれた振動板が音楽を奏でる、という方式です。ボイスコイルごと振動することがないので、振動する部分の質量が小さく、より澄んだ伸びやかな音の再生が得意な方式です。
ただし、BA型はダイナミック型ほど再生する周波数帯域を広く取ることが難しく、それであの小さなカナル型のイヤホンに、低音再生用と高音用のBAドライバーを搭載した2ウェイ型や、それに中域用を加えた3ウェイ型などが開発・発売されています。おかげで、概してBA型はとても高価な製品となってしまう傾向があります。

ATH-E70
バランスド・アーマチュア型インナーイヤーヘッドホン
ダイナミック型とBA型を組み合わせたハイブリッド型
そんなダイナミック型とBA型の長所をいいとこ取りした格好の発音方式があります。その名も〈ハイブリッド型〉です。低域まで伸ばしやすくワイドレンジなダイナミック型と、高域方向を得意とするBAドライバーをともに搭載した方式です。両者の発音方式の違いによる、高音と中~低音の音色の違いをどう折り合わせるかをはじめ、解決しなければならない課題も大きい方式ですが、チューニングが上手くハマると、パワフルかつ繊細で伸びやかな超ワイドレンジ再生が得られることとなります。

ATH-IEX1
ハイブリッド型インナーイヤーヘッドホン
専用駆動を必要とする静電(コンデンサー)型
非常に飛び離れた発音方式に、〈コンデンサー型〉があります。エレクトロスタティック型、静電型とも呼ばれます。電荷を持った板状の電極2枚の間に樹脂の薄膜を張り、電極へ音楽信号を流すことで電極間の静電容量が変化し、膜が振動して音楽を発するという方式です。振動膜が質量ゼロに近いくらい軽いものですから、非常に繊細で細かな情報やホールの音場などを巧みに表現する一方、低音の馬力などは少し優しくなってしまうことがあります。
この方式は、電極に電荷をかけるため「バイアス電流」と呼ばれる電気が必要で、音楽信号も高電圧に変換してやらないといけないものですから、イヤホンジャックへ挿してすぐ音楽再生というわけにいきませんし、ヘッドホンアンプも専用設計の非常に高度なものが必要です。それでもポータブル型を発売しているメーカーがあり、最初出てきた時は本当に驚いたものでした。
他にも、〈平面駆動(磁界)型〉と呼ばれる、コンデンサー型と同じような薄膜へボイスコイルに相当する導体を印刷し、強力な磁界の中で振動させるという方式があります。コンデンサー型とダイナミック型の中間的な構造に見えますが、一般のイヤホンジャックで音楽を楽しむことができることでお分かりのように、動作方式自体はダイナミック型の変種といってよいものです。
いろいろな発音方式ごとに、特徴的な音楽表現や使い勝手があるものです。皆さんにとって、一番しっくりくる方式と巡り合われていることを祈ります。
関連記事
Words:Akira Sumiyama
