60年代に発明された「オイル缶エコー」は不思議な音色を持つといわれる。いまはもう聴くことのないこのオイル缶エコーにインスピレーションを受けてつくられた超マニアックサウンドメーカーと、不思議なサウンドの世界を探究してみよう。

自分で録音した音を、全部“宇宙的”に変換

まず最初に。「オイル缶エコー」ってなんですか? 英語で「oil can delay(オイル缶ディレイ)」とも呼ばれるそれは、60年ほど前に発明されたサウンドエフェクトの一種。ギターなどの楽器の音色に華やかさや鋭さ、迫力を加えるサウンドエフェクトだが、なぜ「オイル缶」なのか。

それは「ツナ缶のような小さな缶」がエフェクトのユニットのなかにあるから。オイルの入った缶とモーター、円盤のディスクが入っており、スイッチをオンにすると、モーターが稼働しディスクが回転。ユニットへと流れてくる音の音響信号を、オイルにコーティングされてた部分が静電気的に維持し、音を反響させるという仕組みだ。リバーブとビブラート音が混ざりあったサイケデリックなオイル缶エコーを、いまでは耳にすることはなかなかない。

そんなレアでニッチなオイル缶エコーのサウンドに触発されて開発されたサウンド生成のアプリが「Soup Granular」。ベルリンとニューヨークを拠点とする音響アプリ開発企業「The Strange Agency」によって2018年にリリースされた(現時点では、iPadのみで対応)。

「Soup Granular」AppStore画面
(出典: Apple App Store Preview

自身で制作した楽曲や録音した音をアプリ上にインポートし、画面上にある赤と緑の二つの点を指でタッチし絵を描くように動かす。すると、動きに反応して歪んだビートやテクノロジーエラーのようなさまざまなサウンドエフェクトが生成され、自分だけのサウンドアウトプットが可能。共通しているのはどんな音でも、宇宙的なサウンドになること。エクスペリメンタルやエレクトロニックミュージック、シンセポップといったジャンルの制作にぴったり。

ビジュアルの世界観も不思議感100パーセント。サウンドをバックグラウンドに、画面中央にある地球のような、緑と紺(ときに赤も)の粒子の集合体が指の動きに応じて動く。まるで砂鉄のようにまとわりついてきたり、微生物のように四方八方に飛びちったり、液体のように流れおちたり。病みつきになりそうなマニアックアプリだ。

Soup Granular

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The Strange Agency

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Images: Soup Granular
Words: Ayano Mori(HEAPS)