ストリーミングが当たり前になった今、音楽はスマートフォンとワイヤレスイヤホンだけで手軽に楽しめる時代です。そんな中で、あらためてレコードに興味を持つ人も増えています。とはいえ、「何から始めればいいのか分からない」という声も少なくありません。Bluetooth対応のレコードプレーヤーで気軽に始める方法もあれば、スピーカーやアンプを組み合わせて、より本格的な再生環境を整えることもできます。
本記事では、ワイヤレスで手軽に楽しむスタイルから有線でじっくり音と向き合う方法まで、レコード再生の始め方とステップアップの道筋をオーディオライターの炭山アキラさんが解説します。
Bluetoothプレーヤーで始めるレコード再生
今の世の中は便利になりましたね。ストリーミングサービスに加入していれば、あとはスマホとワイヤレスイヤホンだけで、何億曲もの音楽を楽しむことができるのですから。
でも、Always Listeningをお読みなら、「いつかレコードも楽しんでみたいな」と希望されている人が多いのではないですか。あるいは、昨今Bluetooth(以下BT)対応のレコードプレーヤーが珍しくなくなりましたから、「もうレコードを楽しんでいるよ」という人も、きっとおられることでしょう。
ワイヤレスヘッドホン/イヤホンでレコードを楽しむなら、BT対応のプレーヤーを1台追加するだけで、最低限のシステムがそろいます。例えば、サウンドバーガー『AT-SB727』を導入なさったら、レコードを聴く時だけテーブルやサイドボードなどへ据え、聴き終わったらごく小さなスペースへ仕舞い込むことも可能になります。サウンドバーガーは本当に「初めの第一歩」として、これほど適したプレーヤーもないと感じています。
サウンドバーガーも、あの華奢な見た目からは考えられないほどしっかり音楽を再生してくれるものですが、もしあなたがゆくゆくはスピーカーまで備えた、ちょっと本格的な「オーディオ」へ進みたいとお考えだったら、もう少し大きめのプレーヤーをお買い上げになる、というのはいかがでしょう。ただ見た目が立派になるだけではなく、そうすることでいくつかいいことがあるのです。
フォノイコライザーと拡張性
例えば、サウンドバーガーの音楽信号は内蔵されたフォノイコライザーを必ず通り、BTで飛ばされるか、直径3.5mmのステレオミニプラグからCDプレーヤーなどとほぼ同じ、「LINEレベル」と呼ばれる大きさで出力されます。一方、オーディオテクニカで最も廉価なBT対応プレーヤー『AT-LP60XBT』でも、内蔵フォノイコライザーをパスして、カートリッジで発電されたままの音楽信号(「PHONOレベル」と呼びます)を出力することができます。
それで何の利点があるのかというと、単体のフォノイコライザーを組み合わせることができる、ということです。AT-LP60XBTに限らず、昨今の一流メーカー製プレーヤーに内蔵されているフォノイコライザーは、レコードの魅力を実に上手く引き出すだけの実力を有しているものですが、それでも単体のフォノイコライザーを組み合わせると、「へぇ、ずいぶん違って聴こえるものなんだな」と驚かれることは私が請け合います。
ワイヤレスヘッドホン/イヤホンで聴いている分には、フォノイコをバイパスする機能は使い道がありませんが、将来のために装備してあるものと考えて下さいね。
交換針とカートリッジで広がる音作り
さらに、AT-LP60XBTのすぐ上の兄というべき『AT-LP70XBT』を選択されたとすると、レコード針を5種類から選ぶことができるようになります。AT-LP70XBTのトーンアームには、先端にオーディオテクニカのVMカートリッジAT-VM95シリーズの交換針が装着できるようになっていて、デフォルトでは接合丸針の交換針が装着されていますが、接合楕円、無垢楕円、マイクロリニア、シバタというバリエーションを取り付けることが可能になる、というわけです。
もっとも、AT-LP60XBTは針交換による音質変化が楽しめないかといえばそうではありません。デフォルトでは接合丸針の『ATN3600LC』が装着されていますが、完全な互換性を持つ接合楕円の『ATN3600LE』交換針も発売されていて、音の違いを楽しむことができます。AT-LP70XBTの方がバリエーションが幅広く、無垢針やラインコンタクト針といった、より高度な針先を楽しむことができる、つまり一段とマニアックに楽しめるというわけですね。
BT対応機でもう一段上のグレードというと、『AT-LP120XBT-USB』となります。DJカートリッジとスリップマットを用意すれば、かなり本格的なDJプレイにも対応するプレーヤーですが、本機はピュアオーディオ用としてもかなり懐の深いプレーヤーです。
オーディオの側面から見たAT-LP120XBT-USBの一番の利点は、ユニバーサルタイプのトーンアームが搭載されていることです。AT-LP70XBTはAT-VM95シリーズの交換針を付け替えて楽しむことができますが、AT-LP120XBT-USBの場合は、ヘッドシェル込み11.8〜17.8gという範囲を満たせば、世界中のカートリッジと取り替えることが可能というわけです。
さらに、もちろんヘッドシェルやシェルリード線も、対応質量へ収まる範囲なら好みのものへ取り替えることが可能ですから、”自分の音” へと整えていく範囲というか、伸びしろが弟たちよりずっと大きいのですね。また、こうやってAT-LP120XBT-USBで積み重ねたノウハウは、もし将来ずっと高価なプレーヤーへ買い替えたとしても、そのまま生かすことができます。初心者がレコード再生の基本的な扱いを身につけていくうえでも、とても適したプレーヤーですよ。
スピーカーで聴くという選択肢
BT対応レコードプレーヤーは、もちろんヘッドホン/イヤホンととても相性の良いものですが、同じようにパワードのスピーカーを組み合わせることも、大いに薦められます。イヤホンと同じく、ペアリングするだけで音を鳴らすことができるのですからね。
「それじゃイヤホンと変わらないんじゃない?」とお思いの方がおられるかもしれません。しかし、ヘッドホン/イヤホンとスピーカーでは、同じ曲を聴いても音楽の聴こえ方が違います。前の方から空間を震わせて届く音楽に、新鮮な魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。それに、家族や友達と一緒に音楽が聴けるのも、楽しいじゃないですか。
有線接続で楽しむ本格オーディオの世界
ここまでは、BTを使うことを前提としたシステムプランでした。有線接続を許容するならば、バリエーションは一気に広がります。有線のヘッドホン/イヤホン、またパワードスピーカーも有線接続は可能ですが、それにとどまらず、より本格的なオーディオシステムの導入が視野へ入ってくる、ということです。
冒頭の方で、AT-LP60X以上のプレーヤーは内蔵フォノイコライザーをパスすることができる、ということを解説しました。それが役立つのは、有線接続を始めてからです。具体的には、スピーカーを鳴らすためにプリメインアンプを導入するのが第一歩でしょうね。大半のプリメインアンプにはフォノイコライザーが内蔵されていますから、プレーヤー内蔵とアンプ内蔵のフォノイコで音を聴き比べ、好みに合う方を使うということができるようになります。
また、少し上級のプリメインにはMM/MCカートリッジ対応のフォノイコが搭載されていることがあり、そうなるとこれまで紹介した4台の中で、AT-LP120XBT-USBならMCカートリッジが使えます。つまり、カートリッジの選択肢が劇的に広がる、ということですね。
たまたま入手したアンプにフォノイコが内蔵されていなかった。またはMMのみの対応だけれどMCを使ってみたい。そういう人は、単体のフォノイコライザーを導入するのがよいでしょう。オーディオテクニカなら、『AT-PEQ30』がMMとMCに対応しています。ボタン1つでMM/MCが切り替えられる、シンプルで使いやすいフォノイコライザーです。
一部の上級フォノイコライザーには、膨大な調整機構が搭載されたものがあります。増幅する大きさ(ゲイン)、MCの負荷インピーダンス、MMの負荷容量、SPレコードやモノラルLPの時代にあったRIAA以外のイコライズ特性などなど、これらを縦横無尽に使いこなせるようになるには、少々の時間が必要かもしれませんが、それらの調整をしっかりと決められるようになった時、お気に入りのレコードが見違えるように生きいきと鳴り渡ることでしょう。
今回は無線か有線かをメインテーマとして、大まかなシステムアップの道筋を描いてゆきました。必ず全員が終着点へたどり着く必要はありません。この中のどれかに、あなたへ最もしっくりくる段階が見つかることを祈っています。
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Words:Akira Sumiyama



